1話(6)
「それじゃあ、部活始めようか!」
鈴木先輩がパンと手を叩く。
「次の新聞の見出しは七不思議! 今日はそれについて聞き込みしていくよ!」
七不思議かぁ……。部活紹介の時から、新聞部は七不思議とか妖怪だとか、そんなものばっかりだ。
他のものは取り上げないのかな?
そう思って私は先輩に聞いてみる。
「あの、部活紹介の時も妖怪って言ってましたけど、妖怪以外を記事にすることってあるんですか」
「翔子ちゃん、いい質問! 私たち新聞部は、学校新聞と妖怪新聞の二種類を発行しているの。学校新聞は私の担当、妖怪新聞は鬼龍院の担当ね!」
……ってことは、あの新聞の文章は、鬼龍院先輩が書いたんだ。
てっきり鈴木先輩が書いてるんだと思ってた。
「妖怪新聞は鬼龍院の提案で作られたものなの。どうしても妖怪について調べたい! そうじゃないと新聞部には入らない! ってね。部員が少なくて廃部するのはごめんだから、しょうがなく受け入れたんだ」
そうだったんだ。でも、何でこんなに妖怪にこだわりがあるんだろう?
私は鬼龍院先輩に目を向ける。でも、先輩は私からぷいと目を逸らした。
うぅ。怖いから、聞くのはやめておこう。
鈴木先輩はつづける。
「最初は妖怪新聞なんて……って思ったけど、案外楽しくてね! まあ、そんな感じかなぁ」
なるほど。
「でもね、あれは予想外。ああ、あれって部活紹介の時の話ね。 あの時プロジェクターで映した新聞、妖怪新聞の方だったでしょ? 本当は、普通の学校新聞を映すつもりだったの。でも、鬼龍院が勝手に妖怪新聞に差し替えてさ……」
「別に、妖怪新聞でもいいだろ」
「もー! それじゃあ駄目なんだってば! そのせいで去年も仮入部誰も来てくれなかったんだから!」
「妖怪新聞見て来る気失せるような奴なんて新聞部にいらねえよ」
「いやいやいるでしょ! だって、私たちが卒業したら部員0人になっちゃうよ!?」
「別に、俺には関係ねえし」
鬼龍院先輩はそっぽを向く。
それを見て、鈴木先輩はやれやれというように溜め息をついた。
どうやら、鬼龍院先輩はいつもこんな感じらしい。
「って話脱線しちゃったね。ごめん、翔子ちゃん!」
「い、いえ! 全然平気です!」
「ありがとね! じゃあ、仮入部の時間は限られてるし、そろそろ聞き込み、行こっか!」
*
「よおし、着きました! 今回調査する酒天童子の噂の発端となった料理部!」
「ん」
やる気満々の鈴木先輩に、鬼龍院先輩は空返事をする。
うぅ……。やっぱりちょっと怖い。
そう思っていると、鈴木先輩が思い出したというように話し始めた。
「そういえば、翔子ちゃんに酒天童子の話してなかったね!
酒天童子は、最近校内で噂になってる七不思議の一つめ、『お酒消失事件』の原因とされてる妖怪なの!」
『お酒消失事件』……。
なんて絶妙なネーミングセンスなんだと私が驚いているのに気づいていない様子で、鈴木先輩は話続ける。
「『お酒消失事件』は、料理部のお酒が使ってもないのに失くなっちゃうっていう事件なの!」
えぇ、事件の内容、薄くない!?
というか、調理実習で使ったとか、賞味期限切れなのを誰かが捨てたとか、そういうのじゃないのかな。
「でも、それだけじゃないの。料理部はしょうがないからってお酒を買い直したんだけど、それもまた全部失くなっちゃったらしくて。そんなことが数回あって、こんな噂になったんだ」
たしかに、それは大変かも。
鈴木先輩、さっき事件の内容薄いとか思ってすみません……!私は心の中で先輩に謝った。
「おい、そろそろ行くぞ」
「そうだね! じゃあ調理室入ろっか!」
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