1話(3)
「新入生のみなさん、ご入学おめでとうございます!」
広い体育館に、マイクを通した声が響く。
今は、入学式が終わって部活紹介が始まるところ。
そして、生徒会長が壇上に立って部活紹介の注意事項を話している。
すると、横に座っている樹理ちゃんが小さい声で喋りかけてきた。
「注意事項、長いね」
「ふふ、そうだね」
先生に怒られないように、後ろをチラチラ見ながら樹理ちゃんは続ける。
「ねえねえ、部活何入るか決めた?」
「うーん……。まだ決定って訳ではないんだけど、一番気になってるのは新聞部かな」
「へー、新聞部か! いいね、仮入部期間、一緒に行こうか」
「行こ行こ!」
私は新聞を読むのも文章を書くのも好きだから、入学する前からずっと新聞部に入りたかった。
なんてったって私は根っからの文系で活字好き!そんな私にとって、新聞部はとっても魅力的だった。
新聞部、どんな感じなのかなあなんて考えていると、生徒会長の話が終わったみたい。
「では、部活紹介の時間です!」
*
わいわいと盛り上がる体育館。
サッカー、バスケットボール、陸上などの運動部に、手芸、吹奏楽、華道などの文化部。その一個一個の紹介がとっても魅力的で、楽しそう。
そして私は、中々出番が来ない新聞部の紹介を、今か今かと待っていた。
「では、えーっと……最後は、新聞部のみなさんですね」
そうアナウンスが響く。
やっと新聞部だ! 他の部活の紹介も楽しかったけれど、やっぱり大本命の新聞部が一番楽しみ。新聞部の先輩……どんな感じなんだろう。
やっぱり新聞部というと、落ち着いていて勉強ができて……みたいな人が多いのかな。
そう思っていると、三つ編みが印象的な先輩が壇上にあがるのが見えた。
なんだか、予想通りな感じの先輩かも!
「みなさんこんにちは! 新聞部の部長、鈴木明美です!」
新聞部の部長はそう言って眼鏡をくいっとあげ、勢いよくパソコンを開く。
「見てください! これが、私たちが作っている新聞です!!」
部長がパソコンのキーボードを勢いよく押すと、プロジェクターに新聞が大きく映し出された。
ぎっしり詰まった文字に意味深な写真。
なんだかすごく本格的!!
ってあれ……?妖怪……??
プロジェクター一面に映し出された新聞には、大きく『妖怪新聞』と書かれている。
校舎案内とか、先生へのインタビューとか、私が思い浮かべる学校新聞はそういうもの。
だから、この新聞を見てちょっとぎょっとした。
文樫高校の新聞部って、こういうのなの……!?
困惑して壇上を見てみると、部長もあわあわと焦っていた。
何かの間違いで、違う新聞が映っちゃったのかな?
すると、一人の男が金色の髪を靡かせながら壇上にあがる。
その男は新聞部長の方に向かうと、先輩のマイクを奪い取った。
「皆さん、これが新聞部の作る新聞、妖怪新聞です!」
体育館内が一瞬にして静まり返った。
「我々新聞部は、校内の噂……例えば七不思議だとかいった妖怪の目撃情報を集め、その真相を追っています。
そして得た情報で新聞を作り、それを通して皆さんにもっと妖怪に興味を持ってもらいたい!これが新聞部の主な活動内容です」
とんでもない内容をまくしたてられ、呆気に取られるみんな。
そして金髪の男はマイクを置き、体育館全体によく通る声でこう言った。
「俺の名前は鬼龍院 友久、副部長やってます。妖怪のこと何か知ってる人はぜひ、明日からの仮入部、よろしくお願いします!」
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