1話(3)

 「新入生のみなさん、ご入学おめでとうございます!」


 広い体育館に、マイクを通した声が響く。

 今は、入学式が終わって部活紹介が始まるところ。

 そして、生徒会長が壇上に立って部活紹介の注意事項を話している。


 すると、横に座っている樹理ちゃんが小さい声で喋りかけてきた。


 「注意事項、長いね」


 「ふふ、そうだね」

 

先生に怒られないように、後ろをチラチラ見ながら樹理ちゃんは続ける。


 「ねえねえ、部活何入るか決めた?」


 「うーん……。まだ決定って訳ではないんだけど、一番気になってるのは新聞部かな」


 「へー、新聞部か! いいね、仮入部期間、一緒に行こうか」


 「行こ行こ!」


 私は新聞を読むのも文章を書くのも好きだから、入学する前からずっと新聞部に入りたかった。


 なんてったって私は根っからの文系で活字好き!そんな私にとって、新聞部はとっても魅力的だった。


 新聞部、どんな感じなのかなあなんて考えていると、生徒会長の話が終わったみたい。


 「では、部活紹介の時間です!」



 わいわいと盛り上がる体育館。

 サッカー、バスケットボール、陸上などの運動部に、手芸、吹奏楽、華道などの文化部。その一個一個の紹介がとっても魅力的で、楽しそう。


 そして私は、中々出番が来ない新聞部の紹介を、今か今かと待っていた。


 「では、えーっと……最後は、新聞部のみなさんですね」


 そうアナウンスが響く。

 やっと新聞部だ! 他の部活の紹介も楽しかったけれど、やっぱり大本命の新聞部が一番楽しみ。新聞部の先輩……どんな感じなんだろう。


やっぱり新聞部というと、落ち着いていて勉強ができて……みたいな人が多いのかな。


 そう思っていると、三つ編みが印象的な先輩が壇上にあがるのが見えた。

 なんだか、予想通りな感じの先輩かも!


 「みなさんこんにちは! 新聞部の部長、鈴木明美です!」


 新聞部の部長はそう言って眼鏡をくいっとあげ、勢いよくパソコンを開く。


 「見てください! これが、私たちが作っている新聞です!!」


 部長がパソコンのキーボードを勢いよく押すと、プロジェクターに新聞が大きく映し出された。


 ぎっしり詰まった文字に意味深な写真。

 なんだかすごく本格的!!


 ってあれ……?妖怪……??


 プロジェクター一面に映し出された新聞には、大きく『妖怪新聞』と書かれている。


 校舎案内とか、先生へのインタビューとか、私が思い浮かべる学校新聞はそういうもの。


 だから、この新聞を見てちょっとぎょっとした。

 文樫高校の新聞部って、こういうのなの……!?


 困惑して壇上を見てみると、部長もあわあわと焦っていた。

 何かの間違いで、違う新聞が映っちゃったのかな?


 すると、一人の男が金色の髪を靡かせながら壇上にあがる。

 その男は新聞部長の方に向かうと、先輩のマイクを奪い取った。


 「皆さん、これが新聞部の作る新聞、妖怪新聞です!」


 体育館内が一瞬にして静まり返った。


 「我々新聞部は、校内の噂……例えば七不思議だとかいった妖怪の目撃情報を集め、その真相を追っています。

そして得た情報で新聞を作り、それを通して皆さんにもっと妖怪に興味を持ってもらいたい!これが新聞部の主な活動内容です」


 とんでもない内容をまくしたてられ、呆気に取られるみんな。

 そして金髪の男はマイクを置き、体育館全体によく通る声でこう言った。


 「俺の名前は鬼龍院 友久、副部長やってます。妖怪のこと何か知ってる人はぜひ、明日からの仮入部、よろしくお願いします!」

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