1話(2)

 「あ、おはよう! えっと、これはね、チョコ食べてるんだ!」


 まさかいきなり話しかけられるとは思わなかったから、とってもびっくり。


 「へ~! 美味しそう!チョコ、好きなの?」


 「う、うん!」


 「そうだ、自己紹介まだだったね! 私、麻葉羅樹理! 樹理って読んで!」


 その子はそう言って、今度は首をかしげてこう聞いてきた。


 「君はなんて名前なの?」


 「えっと、私は、小豆沢 翔子!」


 「翔子ちゃん、ね! 席近いし、仲良くしよ!」


 樹理ちゃんはそう言ってニッと笑う。高校生になって初めての友達は、とびっきりの笑顔が可愛い女の子だ。



 そのあと、HRまでまだ時間があったから樹理ちゃんとお話しすることにした。


樹理ちゃんは、遠くから高校に通っていること。だから、この高校に知り合いがいなくて、友達ができるか不安だったと話してくれた。


 樹理ちゃんはとっても明るくてフレンドリーな印象だったから、そのことを聞いて私は少し驚いた。


キーンコーンカーンコーン


 そんな話をしていると、HRのチャイムが鳴った。

 そのチャイムと同時に、ガラガラと教室のドアを開け、先生が入ってくる。


 「新入生のみなさん、入学おめでとう!」


 先生は教壇に立ってそう言った。


 私はその一言を聞き、自分が高校生になったのだと改めて実感する。


 「中学校と比べて、勉強も難しくなるし、大変なこともきっと増えると思います。ですが、それよりももっとたくさんの楽しい思い出を、この文樫高校でつくってくださいね!」


 楽しい思い出……かぁ。

 私は、窓に大きく映った空を見上げた。


 清々しい青に染まった空に、太陽がサンサンと照り輝いている。


 それを見て、この学校で楽しい思い出をたくさん作れそうな気がする。そう思えた。

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