1話(1)

 「小豆沢……小豆沢……あった!」


 四月一日。ここ、文樫高校の下駄箱前には、クラス表を見るために、多くの新入生が溢れかえっていた。


同級生に押し潰されながらも見つけた『小豆沢 翔子』の文字は、1年4組と書かれた紙に置かれている。


 「友達……できるかな。」


 下駄箱前の同級生たちをかきわけ、教室に向かう。少しの不安と、たくさんのわくわく。


 そんな気持ちで、私は1年4組のドアを開けた。




 教室に入ってみると、まだ人はそこまで多くなかった。


 まだほとんどの新入生が下駄箱の前にいるんだと思う。今のうちに席順を確認しよっと。


 そう思って黒板に貼ってある席順のプリントを見る。私は出席番号が二番みたい。

ってことは、窓際の前から二番目の席かな。


 確認して、自分の席の方に目をやる。すると、前の席にはもうクラスメイトが座っていた。


 高いところで結ばれたツインテール。染められた明るい茶髪が印象的な女の子が頬杖をついている。


 スカートは短くて、いかにも『陽キャ』という感じだ。遠目から見ても、可愛いってことがすぐに分かる。


 髪に手を加えていない上、スカートもそのまんまの私から見たら、とってもキラキラして見えた。


 そんな彼女を見て、ドキドキしながら自分の席につく。

 仲良くできるかちょっぴり不安だな……。

 

 そうだ! 私はごそごそと鞄を漁る。

 こんなときは、チョコに限るよね!


 この前朝から並んで買った、超人気店の高級チョコを口に含む。


 ん~! 甘くておいしい! ほっぺたがおっそちそう!


 私がもぐもぐとチョコを食べていると、前の席の彼女はこちらを振り向いて、とびっきりの笑顔でこう言った。


「おはよ! 何食べてるの?」

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