第8話



「テニア久しぶりー!・・・ってほどじゃないか」

昔の漫画の主人公みたいに右手上げるヒルメイさん。

「ヒルメイ、どうやって・・・座標は?」

「あなたねえ・・・御神体」

「あっ!でもヒルメイまで来ちゃったら」

「アテニア本体があるでしょ!本体も御神体も、異世界転移を可能にする力があるんだから、座標に使えるって考えたらわかりそうなものじゃないの。でもまあ教えてなかったからね、いろいろと」

「いろいろ?」

「必要なこと以外教えてなかったけど、まだまだあなたの知らないことはあるのよ?それよりも!イツキくん、ちゃんと会うのははじめましてー!!」

「あ、どうもはじめまして」

元気な人だなー・・・ちゃんと会うのは?


背はテニアと同じくらい。ブロンドでポニテ、目は緑。

体も細くてテニアと大体似たようなものなんだけど、胸だけ違う。ヒルメイさんデカい!細いのにデカい!


ってあれ?言葉通じてる?

「ヒルメイさん、日本語はどうやって?」

「ん?わたしが先にイツキくんのこと調べてたから」

どういうこと?

「ヒルメイ意味わかんないよー。わたしが見つけたんじゃ?」

「あー、順番に話さないとわかんないと思う。とりあえず何か飲ませてよ。コーヒーって飲んでみたいな!」

コピー?いつ?


ヒルメイさんはコーヒー、俺とテニアはココアを飲みながら始まる話。

「じゃあ話してくね!テニアに教えた異世界転移、あの手順には嘘が混ざってるの」

「嘘?」

「まずは条件検索ね。どうやって異世界の情報を得るの?行かないと出来ないでしょ?」

「わたしそこまで考えてなかった」

そんなんでよく巫女やってたなテニア。

「簡易のサーチ機能は御神体にもあるけど、お婿さん探しまでは無理。あの検索結果は、全部の世界の検索結果じゃなくて、アテニアと同様のシステムに管理されている世界の検索結果なの」

「じゃあこの世界にもあるってことですか?」

「あるよー、衛星軌道に。地球の科学がかなり進歩しちゃったから、あっちと違って光学的処理とかステルス処理とか時々軌道変えたりとかいろいろやってるけど」

オカルト好きとしては、地球の進化の過程などを思うに、誰かが管理してる可能性ってのを考えたことはあったが、アテニアと同じシステムが?


「でもなんでヒルメイがそんなのにアクセスできるのよ?アテニアならともかく、別の世界の管理システムになんて・・・?」

「それは!わたしが!アテニアだからでーす!じゃじゃーん!!・・・・・あれ?」

「・・・ちょっと意味わかんないです」

「・・・わたしも・・・」

「ニブいなあ君たち。アテニア神が降臨し、最初に二人の巫女が選ばれた。でも本当は選んだのは一人だけで、わたしのほうはアテニアの人型端末だったのでしたあ!じゃじゃーん!!・・・・ここびっくりするところだろ反応しろよお!!」

「テニア、ヒルメイさんっていつもこうなの?」

「まあ・・・・ここまでひどくなかったと思うんだけど・・・・」

「じゃじゃーんとか余計だったあ?じゃあ普通に話すわ」

「俺的にはこーゆーノリ嫌いじゃないんですが、今は普通でお願いします」


「あの時・・・って国家統一の少し前ね?戦争ばかりやっててちょっとこりゃ人口減り過ぎちゃうなあと思って降臨したわけですよ。姿見せられないから各国の王の前まで光学迷彩ドローン転移させて、これから巫女選ぶから巫女の言うこと聞けよーって言ったわけ。

で、山吹っ飛ばしたり言うこと聞かない国一つ消したり。あ、一般人は避難させたから大丈夫よ。クソ禿は見せしめとして一緒に吹っ飛ばしてやったけど。その後、様子見で巫女はしばらく常駐しなきゃいけなくなったんだけど、後のこと考えて大陸二つにしちゃってたからね。だからもう一人を選んだってわけ」

「なんで二つに?」

「競い合った方が発展するのが早いと予想されるから。科学技術なんかでは争いつつ、戦争しないで平和にやってくれると、いい感じに発展するって予想してたんだけど、なかなかうまくいかなくって。最初なんか絶滅しかけたしね。

この世界みたいにもっと多数の国でやる方法もあるけど、わたしはめんどくさいから国二つってとこね」

めんどくさいって・・・

「いつ頃からかかわってたんですか?」

「まだ惑星に知的生命体がいなかった頃から。わたしが遺伝子いじって造ったのよ、あの星の人。って話脱線してるね。とりあえずいい?聞きたいことがあればあとで教えてあげるから」

「お願いします」

「でね?彼・・・地球の端末って男なのね。イツキくんも見たことあるでしょ?十字架に貼り付けになってる人。あの人にイツキくん見つけてもらったの」

俺を探し出したのがあの人?今後また出てくるかもしれないってこと?

「じゃあたくさんいる端末さんにわたしの事知られちゃってる?」

テニアまた赤くなりました。テニア的にはそれ重要よね。

「みんな知ってるわよ。そこの文明に表立ってかかわってない時って暇だからねー、みんなノリノリでお婿さん探ししてくれたわ(笑)」

あの人がノリノリで(笑)

「えーやだあ!!もぉお嫁にいけないぃぃ!」

いや俺がいるやろが!

「恥ずかしいからってそれは・・・・俺ちゃんともらうから」

「うん・・・・恥ずかしいよぉ・・・・」

「よしよし・・・」

「はいはいイチャイチャしてないで次行くよー。てか端末さんっていうけど、端末って入出力先だからね?わたしだって話してるのはアテニア本体だからね?

それで各世界のお婿さん候補とテニアの相性を調べるためにコピーさせてもらったの。イツキくんも寝てるときに。勝手にごめんね?」

「いえそれはいいんですけど、じゃあヒルメイさんは一度地球に来ている?」

「そっ!今日が2回目よ」

「ヒルメイ、わたしの知らないところで暗躍してたのね」

「暗躍って言い方やめてよ!あなたのためにやってたんだからね?」

「う~・・・納得いかないけど続けて」

「管理システムがあるから簡単に転移できるし、相性がバッチリの相手は見つけたし、そのままくっつけても良かったんだけどね。あ、そうそう、ここまでテニアに異世界転移の方法話す前のことよ」

「え?じゃあわたしが探しはじめる前に、ヒルメイがわたしのお婿さん探ししてたってこと?」

「そうよー。あなたイレギュラーで巫女になっちゃったけど、真面目に仕事がんばってきたしさ、ちょうどあの世界も彼らの自主性に任せる時期になったことだし、お婿さん見つけて自由にさせてあげようと思ったの。いつも結婚結婚言ってたから」

「ちょっと!わたしが飢えてたような言い方しないでよお!」

「ごめんごめん(笑) で、ただくっつけるより、ドラマチックな出会いにした方が素敵じゃない?わたしがやった検索結果をあなたに送って、イツキくんの行動範囲で転移しやすい場所を探して、電磁波でイツキくんが来るように誘導して、声が聞こえるようにテニアとイツキくんのいる場所にドローン飛ばしたってわけ。まああれで失敗してもわたしが会わせてあげるつもりだったんだけどね」

「・・・おせっかいBBA」

「BBA言うな!最高のお婿さん、まだ彼氏だけど、見つけてあげたんだから感謝してほしいわあ」

「納得いかないなあ・・・・・でも・・・・ありがと、ヒルメイ」

全部ヒルメイさんの掌の上だったわけか。

「俺からも。ありがとうございます」

「うむ、くるしゅうない。でさ!わたしもこっちに住みたいんだけど、この家、空き部屋ないかな?」

「部屋ですか?」

「三人で寝るんでもいいよお?」

それはいい!けどテニアが許すはずないよな。

「ヒルメイ・・・一番はわたしだからね?」

ってテニア?

「もちろんそれでいいよー」

あーこれって・・・

「あの、もしかしてあっちの世界って・・・・」

「一夫多妻!」

「いやいや!日本は重婚ダメですから!」

「どうせわたしたちこっちじゃ正式に結婚できないんだしさあ、形だけあっち式ってことでどお?」

「イツキはヒルメイみたいな女の子嫌い?」

イヤじゃない!イヤじゃないけど!いいのかこの状況?




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