第5話
まだこちらの世界に慣れてないテニアさんを長時間連れ出すのもどうかと思い、午前中で帰ってきた。
俺の方が疲れたっぽいけれど。
なんか彼女にからかわれてるのかな?
からかうなら真っ赤にならんでほしい。なにか勘違いしそうだ。
「昼食もわたしが作っていいですか?」
大歓迎である。
「俺も手伝いますよ。パスタ?これは向こうの?」
「そうですよ。あっちのも食べてみたいって言ってたじゃないですか。あ、一人で大丈夫なので座っててください」
「そう?じゃあお願いしちゃおうかな」
お言葉に甘えておこう。
「はい、イツキさんの好きなペペロンチーノです」
うん、好きなんだけどね。
どこまで知られたのかなあ?
でもあの状況じゃ仕方なかったと思うから責めるは気は無い。
それにテニアさんになら知られてもいいかって思ってる俺がいる。
「美味い!」
異世界のパスタでペペロンチーノ。
美味いのは異世界産だからじゃなく、彼女の腕だろうな。
「あっちで料理いっぱい勉強しましたから。好きな人には美味しいもの食べてほしいので」
赤くなっちゃってかわいいなぁ。
「これならいいお嫁さんになれますよ」
「ほんとですか?!嬉しい!」
俺の嫁に・・・・出会ったばかりで何考えてるんだ俺は!!
「じゃあ一年の長さもあまり変わらない?」
食後は異世界の話。
いちいちメモ取るのは面倒なので動画撮ってます。
「はい、一か月は全部30日。なので一年は360日になります。ちょっと短い程度ですね」
「一日は24時間?」
「あちらの時間の区切り方は、こちらで言う春分の日の夜明けを一日の始まりとして、次の朝までの時間を八つにわけます。
正式にはそうなってますが、実際は、みんな年中夜明けを一日の始まりにしちゃってます(笑)
日時計しかないので、春分の日以外の正確な時間、わかりませんからね(笑)
一日の長さがこちらと違うかどうかですが、正確なところはわかりません。
ただ、わたしがこの世界で違和感を感じていないので、大きな違いは無いと思います」
「差があるとしても微々たる違いってところかな。転移したのって向こうではいつ頃だったの?」
「5月初めだからこちらと同じくらいです。一年の長さが違うので、もし数年後だったら季節にずれがあったかもしれませんね」
彼女が俺の知識をコピーしたおかげでとてもやりやすい。
いちいち意味を説明しなくてすむのはとても楽だ。
「イツキさんって仕事してないんですか?」
「宝くじ当たったから辞めたんです。働かなくても暮らせる金額だったので。俺の年齢じゃまだ働いてるのが普通ですよ」
「あちらでも宝くじに似たものがありますが、そこまでの金額じゃないですね」
彼女も時々質問してくる。コピーにあっても聞いた方が理解が深まるからとのこと。
俺のこと理解深めても仕方ないだろうに。
「こっちみたいに惑星の上の世界でした?それともまっ平な世界だったりとか?」
「まっ平じゃないですよ(笑)地面が丸いのはわかってます。けれどまだ惑星の大きさは不明です。
今わかっているのはわたしがいた大陸ともう一つ、交易がある大陸だけです。
昔はそれぞれの大陸にいくつかの国がありましたが、現在はどちらも大体800年くらい前に統一されて、大陸が国になっています。
わたしの国はイルダース王国。もう一つはアイルテナ王国です」
「大きさで思ったけど、こちらにきて物の重さって変わりました?」
「いえ?変わってないと思います」
「それだとそちらの惑星の大きさは地球とほぼ同じの可能性が高いですね。俺も詳しくないけど、確かその辺が重力に影響するはず。物質の密度とかも影響するんだったかな?」
なんだろう?ちぐはぐな感じ。
住んでいるのが惑星ってのがわかっているなら、暦とかもっと進んでいそうなもんだけど・・・
「気候や街並み、人種、宗教はどんな感じ?」
「私はイルダースの首都、国名と同じ名のイルダースに住んでいました。
首都は冬でも暖かく、雪は降りません。そのかわりに夏はかなり暑いです。
大陸の形、大きさ共にオーストラリアに似ていますね。あ、地図出します」
アイテムボックスから地図を出すテニアさん。確かにオーストラリアっぽい。
「わたしたちの世界とこちらの世界では、おそらく測量技術に差があるので、正確さには期待しないでください。。
イルダースは大陸の最西端。北に行くと多少涼しくなりますが、それでも雪は高い山にしか降りません。南は一年を通してイルダースとあまり変わりませんね」
だからか?持ってきた服も買った服も露出多め。こっちは今まだ涼しいからそうじゃないのも買ってたけど。
「建物は石造り。道路もイルダースは全部石畳になってます。イルダース以外でも大きな街の中心部は石畳で、それ以外は土のままです。
イルダースは中央に王城があります。そこから東西南北四方向に大通りがあり、外壁にある門へと続いています。外壁の高さは5mくらいです。
昔の記録に、外壁は魔獣除けとして造られたとあります。しかしここ250年、魔獣が出た記録はありません。絶滅したとされています。
戦時などの防衛のために壁はそのまま残ってますが、最後の戦争が統一前、今から850年前で、その後は内戦もありません」
魔獣おったんか!魔法ある世界だしな。絶滅したのは良かったような残念なような。
門から王城まで一直線に大通りって大丈夫か?争いごとが少ないからか?
「人種についてですが、わたしたちには人種にあたる言葉はありません。イルダース、アイルテナ共に同じ人種で、他の人種に出会ったことが無かったからです。
だからわたしたちはただ”人”と言っています。コピーから人種という言葉と意味を知り、とても驚きました」
「アイルテナはかなり大きいみたいですね」
「先ほど言った通り、地図は正確ではないかもしれませんが、イルダースよりかなり大きいのは確かです。
大陸の北はこちらでいう北極圏になるんじゃないかと思います。。
その北の果てにはまだ魔獣がいるとされていますが、150年ほど出現記録がありません。
楽観はできませんが、絶滅している可能性は高いと思われます。
この二つの大陸以外は私たちが到達していないため、どうなっているかは不明です。
もしかしたら他の人種もいるかもしれませんね」
どちらもその大きさで、よく一つの国にまとめ上げたもんだな。
俺が考えているより文化レベルは高いのかも。魔法のおかげ?
「あちらにはずっと昔からアテニア教という宗教しかありません」
「昔は国が分かれていたのに宗教は一つだけ?アイルテナも?」
「はい。まだ交流が無い頃から、二つの大陸には同じアテニア教しか無かったんです。
その事実から大昔にはもっと大きな国があったというのが学者さんたちの定説になっています。
ですが古文書にも出てきませんし、遺跡も今のところ見つかっていません」
どうせ行くことの出来ない世界の話。
知ったところで意味は無いかもしれない。
だけど知れば知るほど興味をそそられる。
歴史から消えた大国なんてロマンじゃん!
あと、あちらの世界の文化のレベルは思っていたよりも高いんじゃないか?
テニアさんの話し方はわかりやすく、それらの知識がしっかり身についていることが感じられる
彼女が特別な教育を受けていた可能性もあるか?
まだ元の世界でどんな仕事してたかとか聞いてないんだよな。
転移時の服装から思うに、一般人ではなさそうに思えるのだが?
「テニアさん、最後の戦争が二つの国の統一前ってことは、統一時に争いごとって起こらなかったの?」
「はい。それにはアテニア教が関係しています
アテニア教は、まだ国がまとまる前からずっと信仰されていましたが、
領土争いが絶えない中、実際にアテニア神が降臨されたのです」
「え?マジで?」
「はい。二つの大陸、それぞれに同時に」
「神が争いを終わらせた?」
「アテニア神は、イルダース、アイルテナの双方から一人づつの巫女を選び、巫女の力を知らしめました」
「は?そこは神の力じゃないの?」
「神の力は強大過ぎるため、と言われています」
「・・・・・まあいいや。それで?」
「巫女の力もまた強大なもので、イルダースでは山を一つ平らに、アイルテナでは国が一つ無に帰したとあります」
「でもほとんど昔話みたいなもんでしょ?」
「いいえ、これらは先代の記憶に残っています。」
「先代の記憶?テニアさんって・・・」
「わたしはイルダースの巫女なんです」
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