第7話
「お疲れ様です」
「お疲れ様」
「翠さん、やっっぱり月曜日は疲れてますね」
「そう?」
仕事上がりに後輩がそう言う。そんなにも顔に出ているだろうか。ペタペタと頬に触れて、確かに疲れが抜けにくくなってきたな、と思う。年のせいだろうか。いや、まだ四十だ。そこまでではない、と思っているのだけれど……
「翠さんとこの息子さん、いくつになりました?」
「ん、中一」
「えぇ。もう中学生でしたっけ」
「そうそう。そろそろ反抗期の心配してる感じよ」
「反抗期かぁ、何か青春ですね」
青春、か。そろそろ直にも好きな人が出来たりして。そのうち、うるせぇババア、とか言われたりするのかな。こんな生活を続けていて、そんな風なるのはあり得ないか。直が自立してしまう前に、もう一度母として必要とされたい。そんな願いは持っているものの、言い出せなくて、時間だけが無情に過ぎていく。
「色んなこと体験して、子どもって大きくなるじゃないですか。自分が小さい時はどうだったかな、とか思うんですよね。両親がしてくれたように、私は娘にやってあげられてるかなって」
確か、彼女は小学生くらいの娘がいたはずだ。過去の自分に思いを馳せて、同じようにやってあげたい。そう思えるということは、幸せに育ってきたのだろう。正直言って、羨ましい。母の記憶が薄い私は、寄せ集めの『理想の母親像』しか持っていないのだ。だからこそ、完璧であろうとしてしまう。窮屈だな、と自分でも思うほどに。
「私の実家って、結構お節介なおばちゃんが近所に多くて。彼女たちに育てられた面も大きいと思うんです。でも今じゃ、それもなかなか難しいから、私たち親だけで育て上げなきゃいけない。責任は重いですよね」
「そうねぇ。代わりにネットとか色々あるけれど、人の温かみだとかそういうもので得るところってあるものね。うちの近所にもいたなぁ」
母親のいない私たちを、いつだって気にかけてくれた人がいる。初潮を迎えた時だって、恥ずかしかったけれど彼女に助けを求めた。私の母親像の大半は、彼女の存在が大きい。父の葬儀以来会っていないけれど、元気にしてるかなぁ。
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