極限レベルだけど全ステータス「1」なのがバレて追放された最弱おっさん剣士ですが、レベル補正装備のおかげで勇者もドン引きするくらいに最強になったので追放者ギルドの局長として気ままに生きることにします
【35】遺跡ダンジョン-大規模討伐クエスト<1>
【35】遺跡ダンジョン-大規模討伐クエスト<1>
それからさらに1日、2日と、冒険者ギルドの局員たちの育成は続いて。
その間にもまあ色々と細かなことはあったりなかったりしたのだが――その辺りのことは省いて、問題の5日目。
いよいよ今日が、中央遺跡ダンジョン攻略の決行日である。
身支度を整えてソラスとともに遺跡のある公園へと向かうと、そこにはすでに冒険者ギルドの局員たちが勢揃いしていた。
「ああ、ウォーレスさん!」
こちらを見て声を上げたのは、ノルド氏。いつものベストにシャツの事務員姿の上にローブを纏い、腰には金属製のメイスを下げている。
「……あんた、
「おや、言っておりませんでしたか」
守護官というのは詠唱士の上級クラスで、回復や支援を主な役割としている。
彼の体格から言ったらどう考えても重騎士とか聖騎士とかの類だと思ったのだが……人は見かけによらないとはまさにこのことである。
「まあ、守護官ではありますが接近戦も不得手ではありません。局員たちのカバーはおまかせ下さい」
「わかった……それじゃあお言葉に甘えるとするよ」
そう頷いていると、今度は別方向からまた割り込む声があった。
「ウォーレスさん、お久しぶりです!」
誰かと思って見てみると、そこにいたのは人相の悪いスキンヘッドとモヒカンの二人組。ソラスを強引にギルドに勧誘しようとしていた局員たちであった。
「うげ」
露骨に嫌な顔をするソラスの前に立ち、俺は彼らに軽く手を振る。すると見た目に似合わない爽やかな笑顔を浮かべながら、スキンヘッド――確か名前はゲハルトと言った――が頭を下げた。
「またお会いできて光栄です、ウォーレスさん。今日は我々も気合い入れて討伐にあたらせて頂きますので、宜しくお願いします!」
殊勝すぎて若干気持ち悪いな……と我ながら失礼なことを考えながら、俺は「ああ」と頷いた。
「あんたらはこのギルドじゃ貴重な前衛職だからな、頼んだ。……けど無理はするなよ」
そう告げた後で、俺は周りを見渡して他の面々を見る。
居並ぶのは、レギンブルクの冒険者ギルド局員たちの一団。けれどそれ以外にもいくつかの団体が、まばらに集まってはいるようだった。
その中にはリクトの幼馴染のパーティの姿も見える。そんな彼らを横目に、ノルド氏が口を開いた。
「ウォーレスさんのおかげで、隣街の支局からも登録冒険者が派遣されています。それと、多くはないですがうちの登録冒険者たちも。……総勢で50名ほどです、いかがでしょうか」
「上等だ。ありがとう、ノルドさん――これだけ集まってれば、だいぶ安全に戦えるはずだ」
そう礼を告げると、ノルド氏もまた頷いて。
「そうですね。では……あとは皆さんの士気高揚のため、ウォーレスさんが出撃の号令を出して頂けますかな」
「……え? なんで俺が? やるなら局長代理のあんたの方が適役だろう」
そんな俺の返答に、ノルド氏はゆっくりと首を横に振る。
「ここにいる皆さんは、ウォーレスさんのご活躍があったからこそ集まった方々ですから」
そんなノルド氏の言葉に俺は思わずソラスの方を見て。すると彼女も頷いて、俺のコートの袖を軽く掴むと、
「私もそう思います。ここはウォーレスさんが、どどんとありがたい挨拶を」
なんてことを言ってくる。
二人がかりで迫られてしまっては、なかなかぐうの音も出ない。観念すると俺はノルド氏の示した方、皆の正面方向に置かれた木組みの演台に登って口を開いた。
「あー、ええと。そろそろ時間だから――その、なんつーか、挨拶させてくれ。俺はレギンブルク冒険者ギルド支局の登録冒険者、ウォーレスだ」
そう話し始めると、ざわついていた辺りが静まり返って、皆こちらを向いてくる。
その独特の緊張感に舌をもつれさせそうになりながらも、俺は平常心で続けた。
「今日は皆、集まってくれてありがとう。この街の一大事に、他所の街からも救援に来てくれた皆も、本当に助かる。……この街にそれほど縁があるわけでもない俺が言うのも、変な話だけどな」
なかなか本題に入れずに謝辞ばかり言っていると、最前列で見ていたソラスがぽつりと呟いた。
「おじさんはお話が長いですね……」
「うるせぇ。……ああ、すまん。ともかく、長々とした挨拶は抜きにして、集まった皆に言っておく。このダンジョンの中は――今だいぶ危険な状況だ。デュラハンだの、高レベルのモンスターたちが深層からあふれ出していて、今じゃどうなってるか見当もつかない。だから皆――集団で、決して孤立しないように戦ってくれ。危なくなったら、すぐに逃げてくれ。……俺から言えるのは、それだけだ」
そんなふんわりとした注意の後で、俺は皆をもう一度見回して、告げる。
「それじゃあ、行くぞ。……大規模モンスター討伐クエストの、開始だ!」
かくして――俺たちの長い一日が、今ここに始まりを告げたのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます