EP.5 ライバル
部活の休部期間を利用し、笑華・桜葉・山下・瑠璃の4人は放課後、学内の自習スペースに集まり勉強会を行った。これまでの復習を中心に行い、わからないことは互いに教え合い、充実した時間を過ごし4人は中間試験に臨んだ。
中間試験の結果返却の日を迎え、学園内には張り詰めた空気が漂っていた。掲示板に各学年別順位の掲示されているのを確認するため、笑華と瑠璃は一緒に廊下を歩いていた。
「はぁ、笑華どうしよう・・・。緊張する・・・。この緊張感受験以来だよ。・・・というか、テスト返却前に上位の生徒を発表するとかおかしいでしょ。」
「確かに。自分の結果を先に知りたいよね。」
そんな会話をしながら掲示板付近に差し掛かると、そこは多くの生徒で込み合っていた。時折聞こえてくる会話が気になりながらも、人込みをかき分けるように歩き、2人はようやく掲示板が見える位置にたどり着いた。掲示されている内容を見て笑華は驚きを隠せなかった。
『1年 1位 平良笑華 500点』
〈満点!?・・・私が学年トップ!?〉
笑華は驚きのあまりその場から動けずにいた。笑華以上に喜んでいる瑠璃の姿を見て、ようやく状況を把握することができた。
「笑華すごいよ。満点取れるなんて本当にすごい!!2位との差30点もあるんだよ。賢くて可愛いとくればこれからモテて大変だろうね。きっと今日からみんなの見る目が変わるよ。」
興奮気味に話しをする瑠璃に対し戸惑いを隠せないでいた笑華。
「瑠璃・・・これは現実だよね・・・。信じられない・・・。」
「現実だよ。私も笑華や蒼真、楓のおかげで学年25位!!まぁ、蒼真と楓には負けちゃったけど、次こそは2人を超えてみせるよ。」
急いでその場を離れようとした時、思わず人とぶつかりそうになり咄嗟に避けようとしたが、上手く避けきれずバランスを崩した。転倒する直前、誰かに腕を掴まれ抱き留められた。恥ずかしさのあまり、笑華が慌てて離れようとすると、優しい声が降って来た。
「焦らなくても良い。慌てていると転ぶぞ。」
恐る恐る声のする方を見ると、そこには微笑んでいる如月の顔があった。
「如月先輩・・・。あの・・・その・・・。あ、ありがとうございます。」
「ちゃんと前を見ろよ。」
「はい・・・・。気を付けます。」
如月から解放された笑華であったが、心中は穏やかではなかった。如月の顔を見れずに俯いている笑華に対し、彼が声をかけてきた。
「平良すごいな。俺でも満点は取ったことないぞ。」
思わず顔を上げると、どこか見覚えのある優しい笑顔がそこにはあった。
〈この笑顔、どこかで見たことがあるけど・・・前にお会いしたことなんてあったかな?〉
勇気を振り絞り、笑華は如月に尋ねてみた。
「先輩・・・、どこかでお会いしたことありましたか?」
〈そんな事を聞くということは、うっすら記憶にはあるけどあんまり覚えていないってことだろうな。まぁ仕方ないか。だったら教えるまでもないな。これから距離を縮めて話せばいいことだしな〉
「さあ、なんのことだか。んじゃ、俺行くから。また部活でな。」
立ち去る如月の後ろ姿を、笑華はしばらく目を離せないでいた。
如月が歩いていた先には桜葉の姿があった。すれ違いざまに桜葉が尋ねた。
「如月先輩、笑華ちゃん・・・平良さんの事、・・・好きなのですか?」
「君に答える必要ある?」
「・・・・・くっ。」
「何そのあからさまな顔、君は本当にわかりやすいよね。」
その言葉を聞き、桜葉が何も言えないでいると、これまでにもなく真剣な表情をした如月が言い放った。
「俺、平良の事、誰にも譲る気ないから。」
そのまま桜葉の反応を見ずに反対方向へ歩いていく如月の姿を、ただただ睨みつけるしかできない桜葉であった。
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