第2話 新、幼馴染
俺、清水湖優は驚いていた。
今日、というよりさっき会った謎の美少女が目の前でいきなり泣き出したからだ。
「え、えぇ〜、何〜?」ていうかこの子誰だよほんと。
なんか朝あったような気がするけど気のせいだろう。
すると、女の子を泣かしてしまった(勝手に泣いた)俺に舞華が頬を膨らませ、
「ちょっと湖優〜?何女の子泣かしてんのー!」と、怒りのお言葉。
怒った舞華も可愛いなーと、にやけていると、真面目に聞いてと、軽くゲンコツを喰らってしまった。相槌の代わりにそこまで痛くもないが、形としていたっと反応した。
そんな二人の会話に入ってきた謎の美少女は、
「すみません、少し驚いてしまいました。取り乱してしまい申し訳ありません。」
と、こっちが恐れ多くなってしまう謝礼の言葉に、はははと笑う事しかできなかった。
すると、不思議そうに質問してきた。
「あの、清水湖優さんですよね?」
ほんとに誰だよ。でも名前知ってるってことは知り合い?なのだろう。相槌と一緒に疑問を問うてみた。
「は、はい。ところであなたは?」不思議そうに見つめると、
「私、実はあなたと小さいころよく遊んでいたんですよ。いわゆる幼馴染というものですね。」と、抱きしめたくなるような笑顔で答えてきたから、あーー!思い出したー!
と言いたくなったが、本当に誰かはわからない。嘘をつくと後々ろくなことがないから一応本当のことを伝えておいた。
「俺、君のこと何にも覚えてないや。ほんとにごめん。」
すると、彼女は少し悲しそうに俯き、
「やっぱり覚えてないですよね、記憶がなくなってるんですし......。」
「ん?」と、俺は一瞬固まった。
戸惑うのも無理もない。何故なら、俺は小さいころ交通事故に遭い、記憶を一部無くしているからである。
仮にこの子が俺の過去を知っていてもおかしくないわけだ。
間違っていたらいけないので、事実確認をしてみた。
「つまり君は、俺の過去を知っているってこと?」その問いに、彼女は...
「はい、知っています。君が記憶を失う前の君の全てを。」
驚いた。俺の記憶を失う前のことは両親以外見たことがなかったから。
そして、見落としていた最大の問いを聞いた。
「君の名前は?」
すると、彼女は髪をたなびかせ、答えた。
「申し遅れました、私の名前は小波心中です。」
その名前を聞いた瞬間、頭に激痛が走った。
見たことはないが、どこか懐かしく透き通った声、そして、何故か泣いている。
俺は、何故か嬉しそうにその子の頭を撫でた。
そして、その子は何か叫んでいるが聞こえない。
聞き取ろうと耳を澄ませた。
〜 〜ぅ 〜ぉう
「こう!」
自分の名前を呼ばれ、俺は妙な汗をかいて目を覚ました。
そしてそこには覚えのある人物がいた。
「なんだ舞華か。」
普通なら、目を覚ました時にいてくれるのは嬉しいのだが、なぜかこの時だけはなぜかそう思えなかった。
「あ、やっと起きた!もぉー心配したんだよ?急に倒れるんだもん。」
と、少し涙目になりながら頬を膨らましていた。
え?俺のこと心配してくれてるの?うれしぃ。まじで嬉しい、そりゃあもうベッドの上でライジングサン踊れるぐらい嬉しい。
「あれ、ここは...?」
今更ながら自分の居場所を確認できていなかった。
と、俺の問いに舞華は、
「保健室だよ。」
あぁ、なんだ保健室か。べ、別に期待してねえし?
目覚めたらなんか下半身が気持ちいいとか期待してねえし?
はぁ、ほんとに起きねえかな。
「ていうか、保健室の先生すごく驚いてたんだからね?入学式初日で保健室に来るんだもん。」
と、舞華は微笑みながらさっきの出来事を話した。
俺は自分の新たな黒歴史に苦笑いしながら
「はは、ん?今何時?」
「んーとね、七時半だよ。」
舞華は保健室の壁にかけてあった時計を見て答えた。
俺は安堵のため息を吐きながら、そっと胸を撫で下ろした。入学式出席しないとかどこのヤンキーだよ。
また新たな恥ずかしい過去を作りかけた俺は舞華に一つ質問をした。
「ていうか、誰が俺運んだの?」
俺はそんなに太ってはいないが、ガリガリという訳でも無い。そこらの女子高生が運べるような体重では無いはず。知らんけど。え?最近のjkそんなに力強いの?
などと近代のjkを舐め切ったことを考えていると、当然だが答えが返ってきた。
「浅野君だよ。なんか急に走ってきて、お姫様抱っこしながらここは俺に任せろり!って言いながら運んでった。あれはびっくりしたぁ...。」
途中なんか無性に恩人を殴りたくなることが聞こえてきたが、助けてくれたことに変わりはない。あとで覚えとけよ。
浅野彼方。小学生の時からの仲で、よく一緒に遊んだ。
こいつは頭こそ悪いが、運動神経は良い、小三の時にはバク転を連続でして庭にあった植木鉢をよく割っていた。
そして何よりコミュ力が高い。最初会って知り合いかと思った。他人だと気付いたのは三日後だった。
さらには気遣いもでき、人当たりもいいので近所のおばさんに好かれている。そしてなんか飴ちゃんみたいなものをもらっていて、小さいころよく彼方にもらっていた。懐かしいな。
一人で昔の思い出にしみじみとしていると、舞華が何かを思いついたように叫んだ。
「あ!保健室の時計の時間ずれてる!」
寝起きの頭に冷えた水をかけられたような感覚になった。
「え?!あと何分?」
と、俺はばっと起き上がり、慌てて質問した。
「あと五分で体育館集合だ!」
「えええええええええええ!?」
俺たちは獲物にされた草食動物ばりの速さで駆け出し、保健室を後にした。
俺の高校生活のスタートどうなってんだよ。ほんと。
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