俺の幼馴染はこんなんじゃない!?

永久賞味期限

清水湖優編

第1話 幼馴染

突然だが、君には幼馴染は居るだろうか?わからない人のために説明すると、

 みんながちーっちゃいころに、よくあそんでいたおともだちのこと。


 そして、容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能、人当たりもよく話しやすく、みんなから好かれる存在。そして、俺の事が一番......


 なんて、甘い考えは今すぐそこら辺のゴミ箱にでも捨ててくるがいい。


 小さいころ遊んでいたからといって、勝手に好意を抱かれるなんてことはまずない。


 ボディタッチで勘違いするようなやつを好きになんてならない。


 これは、攻略。そしていかに理想の幼馴染ヒロインを作れるか。


 これは、俺、清水湖優が、マイハニー(仮)佐藤舞華を理想の幼馴染ヒロインにする物語である。


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 ピピピピッピピピピッピピピピッ


 起きたばかりの頭に、目覚まし時計の音がこれでもかと言うほどに、早く起きろと訴えかけている。


 6時。初めての生活にウキウキしすぎて早起きしてしまった。


 なんてったって、今日は高校の入学式だからである。


 あくびをしながら新しい制服に着替える。「はぁー、かっこいー。」つい声に出してしまった。中学の時の学ランが嫌で、「やっぱりネクタイ欲しいよな。」とか子供みたいな理想でこの学校に入学した。


 将来の夢は未定である。高校に入れば何かインスピレーションとか起きるだろう。

 などと考えながら、今日までいつも使っていたリビングに行き、朝食を食べる。


 いつもより余裕を持って食べるパンは絶品だ。朝ごはんはライスかパンかと言う論争があるが、

 俺は断然パン派である。理由は、早く食べ終わるため、遅刻した時に有利なのである。って、俺だけか。


 いつもより少し早いが、家を出た。桜の花びらが、新しい春の生活を祝福しているように思えた。


 いつも通らない交差点を少し足速に歩いた。中学の入学式以来の感覚で今更ながら少しウキウキしていた。


 真っ直ぐ行って、人気のなくなった道に来た。

 こんな道あったんだなーと感慨深そうに思いながら角を曲がった。


 すると、向こうから何やら声が聞こえてきた。


 不思議に思っていたのも束の間、何・か・に思いっきりぶつかった。これはラブコメ王道の!「遅刻遅刻ぅー」ドンっ「きゃっ、ちょっとどこ見てんのよ!」のやつでは?


 いかんいかん、俺には幼馴染将来のお嫁さん(仮)がだな......。


 見上げるとそこに立っていたのは、サラサラと春かぜに弄ばれている銀髪、長いまつ毛、春の日差しに対抗するかのような白い肌。


 一瞬だが目を奪われた。


 って言うかさっき思いっきりぶつかったのに、この人はなぜこんなにも平然なのだろうか?


 見なければよかったと後悔した。本来この少女がいるはずだった俺の胸には、ポメラニアン?らしき『犬』

 が堂々と座っていた。


「だいじょうぶですか...?」と、心配そうに見つめる少女。結構なダメージを負ったが、なぜだかみるみる

 回復してきた。「だ...、大丈夫です。あの、おたくの犬は...。」


「あっ、全然平気ですよ。この子頑丈なんで。」なんだよ頑丈な犬って、新世代のア○ボなの?


 と、少女はその○イボを持ち上げると、「あの、その制服って...。」


「ああ、桜木高校のやつだよ」て言うかこの子の制服って......。

「やっぱりそうなんですね!私もその学校に入学するんです!」と、桜が満開の笑顔にこっちも笑顔になってしまう。


 いかんいかん、俺には攻略すべき幼馴染と言うやつがいるんだった。この子をそう言う目で見てしまったら、今までの努力が全て水の泡になってしまう。「そうなんですね、じゃあまた...。」


「あっ、あの、ちょっと!」聞こえない聞こえない。僕はこの子には出会いませんでした。

 と、罪悪感を置いていくように、そそくさと学校へ向かった。


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 桜木高等学校

 明治44年に立てられた歴史ある学校。

 総生徒数318人、この学校のおよそ7割が女子というそこらの男子には夢のような学校。

 いつも優しい女子たちに囲まれ世界の神秘が体験できる素晴らしい学校。


 しかしそれはあくまで運動神経抜群で、性格も良く、 顔が超絶麗しい方のみとなっておりますのでブスは控ろやください。クラスの女子をブスと叫ぶブス。その顔で大丈夫ですか?


 などと、「お前らみたいな最低な奴らとは違う」と勘違いしている同類が歩いていると、目の前にはマイニューハイスクールが威風堂々と立っていた。


「ここがオレの新しい学校か......」と、謎の強者感を出していると、聞き覚えのある声がした。


「こぉーーーーーう!!!!」

 と、朝からやかましいテンションでオレの声を呼ぶこいつは佐藤舞華さとうまいか

 オレの幼馴染である。


「今日朝ね、目玉焼きにマヨネーズと塩をかけて食べたらめちゃくちゃ不味かった!!」

「お、おう...」なんとも反応に困る会話の初めに戸惑ってしまった。


「あれ?湖優来るの随分と早いね。何かいいことあったの?」

「今日は入学式だから浮かれてただけだよ。てかお前も早いだろ、何時に起きたんだよ。」と、疑問に思い質問してみると、

「へへへ、実は私も楽しみで早く起きちゃった///」


 何てれてれしてんだよ、起きちゃった///じゃねえよ、

 本当にもう、かわいいなあ///


「それはそうと、舞華は何組だった?」と、今年の命運を決める質問に舞華は、

「2組だったよ!」と爽やかに答えた。


 さて、俺も見にいくか。と、クラス名簿表を見るために足を進めた。


「清水、清水ーっと、ん?」アレ?


 何故だろう、俺の名前がないのは。

 何故だろう、人々が争い合うのは。

 何故だろう、地球がこんなに丸いのは。


 二つ目からだいぶスケールの違うことを言っていたが、今の俺には同じ位のスケールに思えた。


「無い!無い!無い!オレの名前があああああ!!!」

 なかった。どこにも。何故か自分の名前が2組にしか無いと確信をもっていたが、ない。


「あちゃー、残念だね。今年は離れ離れかあ。」と、後から来た舞華が少し残念そうに呟いた。


「あぁ、今年は学校行かなくてもいっかな......。」一年好きな人と違うクラスにならなかっただけで人生を棒に触れる俺は異常なのだろうか。そんな意気消沈した村人に、女神様は囁いた


「だめだよ!湖優がいないと帰り道誰と一緒に帰ったらいいの?寂しくて死んじゃうよ!」


 あぁ、俺は君に出会い、結婚し、3人の子供に恵まれ、子供の成長していく様子を幸せそうに眺め、仕事もうまくいき、課長にまで昇格した。しかし、一つの疑問が生まれた。愛した女性と結婚し、3人の子供に恵まれ、課長にまで就任までしたが、いつしか幸せという感情が薄れていった。いつもの日常が当たり前に思えてきた。しかし君はこう語りかけてくれた......「あなたが幸せと感じられるように、いつもあなたをときめかせて見せるわ。」と、

「フォおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」


「うわああああああああああああ!!!!」

「キャアあああああああああああ!!!!」


 悲鳴をあげるのも無理もない。さっきまで人生のどん底に落ちていたオレがいきなり叫び出すんだからな。

 どこかの夢の国のジェットコースターに乗ったかのような悲鳴をあげた舞華と女の子。ん?女の子?


「って、もしかして......こうちゃん?」


 と、謎の美少女は俺のニックネームらしき名前を呼んだ。何故か記憶の片隅にその名前が記憶されている。


 小さい頃、誰かが何度も何度もオレを呼んでいたような気がした。どこか懐かしいような暖かいような、少し寂しい感じがした。そして彼女の瞳から涙が溢れた。

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