第04話
マストラ一行が受けた依頼は現在マドラの洞窟で大量発生しているオーク共が
オーク自体は危険度ランクC級相当のモンスターだが、洞窟内で徒党を組んでいる数が数とのことでクエスト難易度はB級に指定されている。そう簡単には依頼達成といかないだろう――と、思っていたのだが。
「プギャアァァァッ!」
岩の陰で待ち伏せていたオークの小隊を苦もなくマストラ一人で切り伏せる。
バスタードソードを巧みに振るい返す刃で一匹、また一匹と素早く片付けていくその様はとてもそれまでモンスターと対峙してこなかった者の腕前ではあるまい。
編集長は一緒に組んだ仲間が強かっただけだとか或いはデマじゃないかだとか言っていたが、これを見てからではそんなことは口が裂けても言えないに違いない。
実際に目撃した若手記者ですら、驚きのあまり口を閉してなにも言えないでいるほどなのだから。
ゆえに誰もが認めるべきだ。
マストラ・オルレウスは、決して草むしり冒険者などと見下していい男ではない。
ひとかどの実力を持つ、一端の冒険者であると。
「……一つ質問してもいいですか、マストラさん。どうしてそんなに強いのに貴方はこれまで草むしりの仕事しかしてこなかったんですか?」
周囲に残存勢力がいないことを確認し、一旦得物を収めるマストラの背に向かってそう尋ねる。
若手記者に宿るジャーナリズム魂が
だからこそこの疑問だけはなんとしても明らかにしておきたかった。
「……草むしりとて人の役に立つ仕事だからだ」
シンプルな回答に、拍子抜けする。
「それだけ、ですか? 他にもっとこう、たとえば昔仲間を失ってそれがトラウマになっていたとか、モンスターとの戦いで大怪我を負って普通の冒険者としての道が絶たれたとか、そういう感じの読者を納得させやすい理由はないんですか⁉」
我ながらなにを無茶ぶりな要求をしているのかと思わなくもないが、ジャーナリストとしてつい他人にもインパクトあるエピソードを求めてしまうのは職業病なのだから仕方がない。
案の定マストラは首を横に振り「悪いが、そんなのはない」と前置きした上で、こう語った。
「
「そう、ですか……」
「期待に応えられないですまないな」
「……いえ、なんというかマストラさんらしい理由で逆に安心しました」
これは本心だ。
記事にする内容としてはともかく、彼のその考えはおおよそ好感のもてるところではある。
一見とっつきにくい印象の人物だが、その内面を知る度に不思議と人柄と生き様に惹かれていく部分があるのも事実だ。
補足しておくとモンスターの討伐依頼にも範囲を広げるようになったのはやはりパーティーを組んだからで、人の役に立ちたいという彼の意思に共感を示した仲間達の存在も大きいようだった。
もちろん草むしりの依頼も折を見ては引き受けているそうだ。
本人曰く『別に自分は英雄志望ではない。だからパーティーを組んだからといってこれまでの仕事も蔑ろにするつもりはない』とのこと。
どこまでもまっすぐで、純粋な男だと感じる。
だからこそ仲間達もマストラに信頼を寄せ、彼を慕っているのかもしれない。
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