第8話 初恋との再会なのでござる!

 あたくしは、水の聖女の討伐戦に負けてしまった。

 親とは不仲、そして、姉には住まわしてもらっている形で、あたくしは無一文の状態となるだろう。


「よく頑張ったでござるな」


 どこからか声がしたかと思うと、目の前にいたのは、佐藤君。

 鮫のパーカーを着た、緑髪の佐藤スズキ君という、あたくしの幼馴染だった。


「佐藤君・・・・?」


「強くなれなくても、水の聖女になれなくても、頑張ったでござるな。


これからは、ずっと一緒にいようでござるよ」


 あたくしは・・・・、あたしは泣いてしまった。


「ずっと、ずっと、頑張ったでござる・・・・!


頑張ったんだよ・・・・。


佐藤君に会いたくて、あたくしは強くなりたくて・・・・・。



あたしが、ここで負けたら、佐藤君に会えないんじゃないかって、ずっと・・・・・」



「君には、幸せになってほしいでござるよ。


わたくしに守られてばかりでいいでござる。


だから、わたくしと結婚しようなのでござる」


「うん、あたしはずーと、佐藤君だけが、スズキ君だけが大好き・・・・」


 水の聖女にはなれなくても、あたしは、スズキ君と再会することができた。


 この10年間、あたしは幼馴染と再会することのためだけに頑張ってきた。

 だから、強くなれなかったら、聖女討伐戦に負けたら、終わりと思っていたけれど、向こうから会いに来てくれるとは思わなかった。


 あたしと、スズキ君は二人になれた。

 

 あたしは、ひさめ君にある日に会いに行った。


「叔母さん、しばらくどこに行ってたの?


帰ってこなかったから、心配したよ」


「ごめん」


「叔母さん、鮫のパーカーは?


しかも、その髪の色・・・・。



いつもと、話し方が違う・・・・」


 あたしは、元の黒髪黒目となり、鮫のパーカーも着なくなり、話し方も普通に戻っていた。


「今まで、ありがとう、ひさめ君。


あたしは、これからは旅に出るよ」


「出るって・・・・?」


「あたしは、婚約者ができたの。


だから、同棲しようと思うからさ、ずっと一緒にいてくれてありがとう」


「そんな、急に?」


「ほんと、急だよね」


「叔母さん、なんか落ち着いてない?


何があったの?」


「なんでもない。


とにかく、ありがとう。


また、何かの縁があったら会おうね」


 あたしは、ひさめ君に挨拶をしたら、すぐに姿を消した。


 あたしの人生は、鈴木氷雨ではなく、佐藤氷雨としての人生が始まろうとした。

 まだ、結婚できる年齢でもないから、これから先の話だけど、まずは高校を卒業しよう。

 話はそこからだ。


 そして、両親に反発して、家出したことを謝ろうと今のあたしなら思える。

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