過去編~鈴木氷雨のヤンキー幼馴染み~第4話

「佐藤君、これって・・・・?」


 おそるおそる聞いてみた。


「警察たちは、永遠の眠りについたでござるよ」


「そうじゃなくて、今のは魔法?」


「それ以外に、何があるでござるか?」


「魔法なんて、本当にあるの?」


「魔法の存在を信じていないとか、氷雨は大人に影響されたのでござるな。


あるでござるよ。


なければ、世の中はほとんどで成立してないでござる。


魔法が存在しないって言うのなら、その根拠を示してほしいくらいでござるよ」


 そうか。

 あたしは、やっと理解した。

 佐藤君は魔法で、人を・・・・。

 これ以上のことは、言いたくない。



 こんな小さな体で、どうやって大人たちに勝てるのかと疑問に思っていたけれど、信じられないけど、魔法を使っていたのかもしれない。


「さ、ここにはいられないから、異世界へ行くでござるよ」


 あたしは、佐藤君についていった。


 ここで、あたしは異世界の存在のことも知っていくことになる。

 絵本で読んだこともある異世界や、魔法も、あれは誰かの作り話とくらいしか思っていなかったけれど、本当にあったんだ。


 異世界にはたくさん怪物がいて、その度に、佐藤君の「アグアシャワー」とか「水鉄砲」に守られてばかりいた。


「氷雨、やっぱり、今の君には異世界は危険でござる」


「うん」


 あたしは、否定しきれなかった。

 異世界で、足手まといになっていることは事実だから。


「わたくしは、氷雨をいつまでも、待っているでござるよ。


だから、氷雨も強くなれたら、また会いに行くでござる」


「いつか、また会おうね」


「あと、小さい頃の記憶のことは忘れちゃいそうだから、これをあげるでござる」


 あたしは、佐藤君から鮫のパーカーをもらった。


「嬉しい、ありがとう。


いつまでも、大切にするね」



 こうして、あたしは元の世界に帰ってきた。


 両親からは「どこに行っていたの?」と怒られた。


「あたしは、近所の佐藤君のところに遊びに行っていたんだよ」


 あたしは、親に嘘がつけなくて、本当のことを言ってしまった。

 殺人鬼の佐藤君のことを言ったら、もっと怒られるような気もしていたけど・・・・。


「佐藤君?」


 母が、首をかしげた。


「そんな子、近所にいたか?」


 父も、首をかしげた。


 聞く話によると、なぜか佐藤君の存在は、最初からいないことになっていた。


 これは夢なのかと、その事実を知ってからそう思っていたけれど、あたしは鮫のパーカーを持っている。


 夢じゃない。

 あたしは、鮫のパーカーを着た。


「こんな、パーカー、どこで拾ってきたの?


今すぐ、捨てなさい」


 母親から、脱がされそうになったけれど、


「いやでござるよ」


 あたしは、母親の手を振り払った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る