過去編~鈴木氷雨のヤンキー幼馴染み~第3話

 佐藤君の着ている、鮫のパーカーには、飛び血がついていた。


「まさか・・・・」


 あたしは、現実を否定したかった。

 あたしの幼馴染は、噂である殺人鬼であることが真実だということを。


「氷雨、ごめんでござるね。


わたくしは、理想の王子様になれなくて」


「何を謝っているの?」


 あたしは、涙を流していた。

 涙を抑えられるわけがなかった。


「わたくしは、小さい頃から、ずっと氷雨のそばにいて、氷雨を守れるくらいの男になりたかったでござるよ。


氷雨、こんなわたしくでごめんでござる。


大好きでござるよ」


「あたしも、ずっと佐藤君が好きだった・・・。


だけど、こんな形でなんて、嬉しくないよ・・・」


「あはは、氷雨を悲しませる形でごめんでござる。


わたくしは、氷雨に笑ってもらえる、楽しませられることを目標に頑張ってきたのに、なぜ、こんなふうになってしまったのか、自分でも不思議でござるね」


「あたしは、楽しかったよ。


佐藤君といられる日々が」


「だけど、氷雨はなぜかいつも、楽しそうに感じられなかったでござるよ。


おふざけは、わたくしの生きがいでござる。


だから、氷雨にもふざけてほしかったでござるよ」


「こんな時でさえも、わけがわからないことを言うんだ・・・・」


 あたしは、佐藤君が犯罪者になってしまって悲しい気持ちと、やっと佐藤君と話せたという嬉しい気持ちで、涙を流していた。


「氷雨、これからは自分の道を行くでござるよ。


真面目だけが取り柄の氷雨かもしれないけど、笑って、毎日を楽しく過ごしてほしいのでござるから。


じゃあ、わたくしはこれで最後でござるね」


「最後なんかにさせないから、佐藤君、一緒に逃げよう」


「え?」


「君は、警察に追われるかもしれない。


大人たちも、佐藤君を許してはくれない。


だけど、あたしは、佐藤君と一緒にいたい。


だから、佐藤君、一緒に逃げよう。


幼稚園のことも、これからのことも、あたしは別にいいから、佐藤君とずっと一緒にいたいの」


「氷雨・・・・」


 佐藤君は、犯罪者になってしまった。

 だけど、あたしは、佐藤君と一緒にいられるなら、どんな方法でもよかった。


「氷雨、わたくしのことを好きになってくれて、ありがとうでござるよ・・・。


わたしくも、氷雨が大好きでござる。


氷雨しかいないでござるよ」


 佐藤君も、泣いていた。


 だけど、パトカーに乗った警察の方が来てしまい、あたしと佐藤君は囲まれてしまった。


「佐藤君!?」


「大丈夫でござるよ。


わたしくを、何だと思っているでござるか?


アグアシャワー」


 空から雨が降って、それに当たったパトカーは壊れ、警察たちは血だらけの状態で倒れた。

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