過去編~鈴木氷雨のヤンキー幼馴染み~第2話

「佐藤君、幼稚園にこんな格好で着ていていいの?」


「何を言っているでござるか。


自分でいいと思えば、いいのでござるよ」


「それ、かっこよくないから」


 あたしは、さりげなく毒を吐いた。


「氷雨は、もっと自分らしく生きていいと思うでござるよ」


「自分らしく、か・・・。


自分らしくなんて、言われてもわかんないんだ。


あたしは、物心がついた頃から、親の言いなりで、親のために生きてきたから」


 あたしは、悲しそうに話した。


 自分らしくなんて、生きれるわけがない。

 あんな親から生まれてしまったのだから、わけもわからない状態で、従うしかないのだ。


「なら、ふざければいいでござるよ。


なぜなら、おふざけは、生きがいだからでござる」


「言っている意味が、わからないよ」


 いつだって、そう。

 佐藤君は、わけもわかないことを語りだす。


 誰が、どこから見てもわかるように、佐藤君という人は、極度な不思議ちゃんだ。


 幼稚園から始まっても、親からの解放はされず、いやいや私立の小学校の入学のために勉強をする日々だった。

 あたしが、何のために生きているのかわからない。


 本当は、髪を伸ばしたい気持ちもあったけど、あたしは諦めていた。

 あたしは、親という存在がなくなるまで、男の子のように短い髪の状態で過ごすんだと思っているから。


 しかも、学習塾にも行かせられるようにもなり、忙しいせいか、佐藤君との時間も次第に減ってきた。

 

 佐藤君は、気が付けば有名な、最恐な幼稚園ヤンキーとしても、恐れられるようになり、近所の人も避けていき、あたしの両親も、佐藤君から引きはがすようになっていった。


 でも、あたしは佐藤君が気になってしょうがなかった。

 だって、あたしは佐藤君のことが、恋愛対象として好きだから。


 そして、数年の月日が流れて、あたしは幼稚園の年長になった。

 佐藤君は、大人でも勝てない鮫のパーカーを着た最恐のヤンキーとなっていた。


 そして、人を殺すようにもなっていた。

 両親から、そんな話を聞いて、いてもたってもいられなくなり、あたしは家を飛び出して、佐藤君を捜しに行っていった。

 どうして、このような行動をとっていたのか自分でも、わからない。

 ただ、あたしが見つけてあげなきゃいけない気がしたから。


 ごめんね、佐藤君。

 あたしは、佐藤君にかまってあげられる時間が、本当になかった。


 あたしは、鮫のパーカーに血がついている佐藤君を見つけた。


「佐藤君・・・・?」


「氷雨でござるか?」


「佐藤君、何をしているの?


殺人を犯したって、話は本当なの?」


「そんなものは、このパーカーについたものを、見ればわかるはずでござるよ」

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