第19話 ヘレニジア強襲

西暦2025(令和7)年3月20日 ヘレニジア連邦共和国北西部


 それはまさに暴挙であった。


「攻めてきた、攻めてきたぞぉぉぉぉぉ!!!」


 ヘレニジア陸軍の兵士が大声で叫び、他の兵士も血相を変える。何せ攻めてきているのは、ラテニア連邦の誇る陸軍機甲師団であり、空にはヘレニジア空軍の持つものよりも遥かに高性能なジェット戦闘機が飛び、迎撃に赴いたヘレニジア空軍の戦闘機を瞬殺していた。それはまさに一方的な蹂躙であり、この暴力を止める事などできやしなかった。


 200ミリ榴弾砲の長距離射撃は152ミリ榴弾砲が据え置かれた陣地を一方的に吹き飛ばし、戦車部隊の障害を物理的に排除。それを合図として数十両の戦車が波となってヘレニシア軍に迫りくる。それに対してC51戦車は100ミリ砲を撃って迎撃を試みるも、鋳造製の砲塔は徹甲弾を容易く弾き、直ちに応射。C51の砲塔は粉々に砕け散った。


「蛮族ごときに敗北を喫する様な劣等種族は、偉大なるカトリカの民には相応しくない。神の子の欠陥品を全て始末するのだ」


 ラテニア陸軍の指揮官はそう声高らかに言い、装甲車両の軍団はそれに答える様に攻勢を強める。この攻勢を止めるべく、空にはDs-11〈ウルガン〉ジェット戦闘機が軽攻撃機とともに展開していたが、それに十数機のジェット戦闘機が襲い掛かった。


 それは旧ソ連のMigミグ-23〈フロッガー〉に酷似したジェット戦闘機であるが、主翼はMig-21〈フィッシュベッド〉の様なデルタ翼であり、速度はもちろんの事、旋回性能についても〈ウルガン〉を凌駕していた。


 そして3個師団は空軍の支援を受けながらそのまま国境線を突破し、一つの都市を呑み込む様に攻め入ったのである。

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