第17話 クレティア侵攻

西暦2025(令和7)年3月15日 ヘレニジア連邦共和国クレティア島


 ヘレニジア連邦共和国の南、ケプロシア王国の真西に位置するクレティア島は、13の都市国家ポリスのうちの一つであるクレティア市を有する。そして南の海の防衛拠点でもあり、第2艦隊が配置されていた。


「さぁ、我らの戦い方を見せつけようではないか」


 海上自衛隊護衛艦隊旗艦「いずも」の艦隊司令部にて、伊藤は声高らかにそう言い、多くの自衛官が頷く。


 此度の戦闘に投じられる兵力は、水陸機動団の空挺降下小隊を載せたヘリコプター搭載護衛艦1隻に15.5センチ三連装砲で武装した大型護衛艦2隻、艦隊防空を担うミサイル護衛艦2隻に汎用護衛艦11隻、補給艦2隻の計18隻。潜水艦で手痛い初撃を与える事も考えられたが、今回の作戦はパフォーマンスが重要である。敢えて同じ土俵に立ち、相手の常識の範囲内での正攻法で勝つ事で、相手の心をへし折るのだ。


「司令、予想通り敵艦隊は港から出てきました。哨戒艦艇も投じてくる辺り、全力で出迎えてくるようです」


 戦闘指揮所CICより敵艦隊の動向が伝えられ、伊藤は石原艦長に視線を向ける。


「これは中々に立派な歓迎会を開いてくれる様だ。こちらも相手さんのレーダーにしっかり見られる様に、派手に立ち回ってやろうではないか」


「了解。でなければ、偵察機をわざと逃がした事が無駄になりかねませんからね。盛大に相手してやりましょう」


 艦隊は接近を続け、そしてついに敵艦隊を水平線上に捉えられるまでに詰める。とその時、CICより鋭い声が飛んだ。


「あっ…敵艦隊より複数の飛翔体の発射を確認。数は凡そ12」


「む、ミサイルを撃ってきたか?」


「ですが、有視界で撃ってきたので性能は推して知るべし、でしょう。十分に迎撃可能です」


 石原がそう説明している最中、すでに前衛を担うイージス艦2隻が対応を行っていた。フェーズドアレイレーダーにて捉えた12発のミサイルに対し、ミサイルではなく主砲で対応。だが亜音速で低い弾道を描きながら飛んでくるミサイルなど、訓練支援艦の飛ばしてくる標的機に比べたら玩具に等しかった。


 ミサイルを全て叩き落とした後、汎用護衛艦は敵艦隊に接近し、哨戒艦艇や駆逐艦を捕捉。お返しとばかりに艦対艦ミサイルを斉射する。一度海面ぎりぎりを這う様に飛翔し、限界まで距離を詰めてから高い弾道で急降下してくるミサイルに対し、ヘレニジア艦は全くの無力であった。


 斯くして、敵艦隊を蹴散らした護衛艦隊は輸送隊群とともにクレティア島に接近。そして本格的な上陸作戦を開始したのである。

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