俺がカノジョに寝取られた理由

下城米雪

第一章 汚れた初恋(約4万文字)

1.初恋の終わり

 その夜、俺は見知らぬ男に半裸で跨る幼馴染を目にした。


(……は?)


 俺は咄嗟に身を隠した。

 

(見間違い、だよな?)


 ここは学校。時刻は午後八時頃。

 明日提出する宿題に必要なノートを忘れ、取りに来た。


 鍵あいてんじゃん。

 セキュリティがガバガバかよ。

 そんな感想は、教室に近づいたところで新たな衝撃に塗りつぶされた。


 声が聞こえた。

 よく知る女の声だった。


 最初は空耳だと思った。

 だけど気になったら止まらない。


 恐る恐る声がした教室に近づいて、覗き込んだ。


 窓際、人影がふたつ。

 机に寝転がる人物と、その上に跨る制服を半分だけ脱いだ女子。外から差し込む光によって顔がハッキリと見えた。


(……待て、待て、ありえないだろ)


 何かの見間違いかもしれない。

 息を整え、再び覗き込もうとした時、声が聞こえた。


「いやぁ、意外だったわ」


 男の声だった。


優愛ゆあちゃん、小倉おぐらと付き合ってると思ってたわ」


 それは幼馴染と、俺の名前だった。


「あんなインポ野郎の話しないで」


 息が止まった。


「ハル君、私がずぅ~っと誘惑してるのに、ぜーんぜん手を出してくれないの」


 歯がカタカタと震え、吐き気がした。

 

「だからぁ、たまにこうしてぇ、肉◯イブ使ってるんだよねぇ。お金も貰えて最ッ高♡」


 視界が歪む。

 噓だ。ありえない。


「てか君、もっとおち〇ちん硬くできないわけ? ちっとも気持ちよくないんだけど」


「はぁ? 大きさには自信あるんだが?」


「うわ、童貞っぽいこと言わないでよ。大きけりゃ良いとかエッチな本の中だけだから」


 俺は這うようにして教室から離れた。

 直ぐにでも走り去りたいのに、手足の感覚が無くて、まともに移動できなかった。


 部屋に戻るまでの記憶は残っていない。


 頭が真っ白だった。

 理解できたことはひとつしかない。


 俺の初恋は、最悪の形で終わったのだ。

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