第6話「キャラクター診断」

 黒睡蓮女学院の漫画研究部の部室は、いつもの放課後の静けさに包まれていた。窓から差し込む夕日が、部屋全体をオレンジ色に染め上げている。壁には歴代の部員たちが描いた漫画のイラストが飾られ、本棚には漫画の単行本やアニメのBlu-rayがびっしりと並んでいる。


 柚子、瑠璃、鏡花の3人は、それぞれの定位置でくつろいでいた。柚子は部室の隅にあるビーズクッションに座り、スマートフォンを熱心に操作している。瑠璃は窓際の椅子で、優雅にお茶を飲みながら文庫本を読んでいる。鏡花はソファに寝そべり、ファッション雑誌を読みながらガムを噛んでいる。


 突然、柚子が声を上げた。


「ねえねえ、みんなぁ~。面白いの見つけちゃったよぅ~」


 瑠璃は本から目を離し、柚子を見つめた。


「何よ、また変なサイト?」


 鏡花も雑誌から顔を上げ、ガムを鳴らしながら言った。


「なんや? またアイドルの裏アカでも見つけたんか?」


 柚子は首を横に振り、眼鏡を直しながら笑顔で言った。


「違うよぅ~。『あなたは誰の漫画キャラクター?』っていう診断テストなんだぁ~。やってみない?」


 瑠璃は少し興味を示した様子で、本を閉じた。


「へえ、漫画キャラクター診断? 面白そうね」


 鏡花も体を起こし、柚子の方に近づいてきた。


「ほう、それ面白そうやな。ウチ、どんなキャラになるんやろ」


 柚子は嬉しそうに画面を2人に見せた。


「ここに色々な質問があって、答えていくと最後に自分に似てるキャラクターが出てくるんだよぅ~」


 瑠璃は少し疑わしそうな表情を浮かべた。


「本当に信頼できる診断なの?」


 柚子は胸を張って答えた。


「大丈夫だよぅ~。すっごく有名なサイトだし、みんな楽しんでるみたいだよぅ~」


 鏡花はニヤリと笑いながら言った。


「まあ、信頼性はともかく、やってみたら面白いんちゃう?」


 瑠璃はため息をつきながらも、少し興味を示した。


「そうね。じゃあ、やってみましょうか」


 柚子は飛び上がって喜んだ。


「やったぁ~! じゃあ、順番に診断してみようよぅ~」


 3人は柚子のスマートフォンを囲むように集まった。


「じゃあ、最初は柚子からね」と瑠璃が言った。


 柚子は頷き、質問に答え始めた。


「えーと、『好きな食べ物は?』……うーん、やっぱりスイーツかなぁ~」


 鏡花が突っ込んだ。


「お前、いっつもスイーツ食べとるもんな」


 柚子は照れくさそうに笑った。


「だって美味しいんだもん。あ、次の質問。『休日の過ごし方は?』……そうだなぁ~、アニメ見たりゲームしたりかなぁ~」


 瑠璃はため息をついた。


「まったく、もう少し外に出たらどうなの?」


 柚子は舌を出して答えた。


「だってぇ~、外より部屋の方が楽しいんだもん」


 質問は続いていく。


「『好きな色は?』ピンク!」

「『得意な科目は?』えーと、数学かな」

「『理想のデートは?』アニメイトでお買い物!」


 瑠璃と鏡花は柚子の回答を聞きながら、時々顔を見合わせて苦笑いしていた。


 最後の質問に答え終わると、柚子は興奮した様子で結果を待った。


「わくわく、どんなキャラになるかなぁ~」


 画面が切り替わり、結果が表示された。


「うわぁ~! 『涼宮ハルヒの憂鬱』の涼宮ハルヒだって!」


 瑠璃と鏡花は驚いた表情を見せた。


「ハルヒ?」

「あの、めっちゃ元気な子か?」


 柚子は嬉しそうに飛び跳ねた。


「やったぁ~! 大好きなキャラだよぅ~!」


 瑠璃は冷静に分析を始めた。


「確かに、柚子の性格を考えると納得できる結果ね。元気で、周りを巻き込むタイプだし」


 鏡花も頷いた。


「せやな。なんか、ぴったりな気がするわ」


 柚子は照れくさそうに頬を掻いた。


「えへへ、そうかなぁ~。でも嬉しいなぁ~」


 次は瑠璃の番になった。


「さあ、瑠璃ちゃんの番だよぅ~」


 瑠璃は少し緊張した様子で、スマートフォンを手に取った。


「わかったわ。やってみるわね」


 彼女は慎重に質問に答え始めた。


「『好きな食べ物は?』……和菓子かしら」

「『休日の過ごし方は?』読書に決まっているでしょう」

「『好きな色は?』紫よ」

「『得意な科目は?』文学ね」

「『理想のデートは?』美術館巡りかしら」


 柚子と鏡花は瑠璃の回答を聞きながら、時々顔を見合わせてくすくす笑っていた。


「なによ、そんなに笑って」と瑠璃が少し不機嫌そうに言った。


「ごめんごめん、瑠璃ちゃんらしい回答で面白かったんだよぅ~」と柚子が謝った。


「ほんま、瑠璃らしいわ」と鏡花も付け加えた。


 最後の質問に答え終わると、瑠璃は少し緊張した様子で結果を待った。


「さて、どうなるかしら……」


 画面が切り替わり、結果が表示された。


「え? 『進撃の巨人』のミカサ・アッカーマン?」


 柚子と鏡花は驚きの声を上げた。


「えぇ~!?」

「まじか!?」


 瑠璃は困惑した表情で画面を見つめていた。


「どういうことかしら……私がミカサ?」


 柚子は興奮した様子で説明を始めた。


「すごいよぅ~! ミカサって、めっちゃ強くてかっこいいキャラなんだよぅ~!」


 鏡花も頷きながら言った。


「せやな。冷静で、周りのことをよく見てる感じやし、なんかわかる気がするわ」


 瑠璃は少し照れくさそうに髪をかきあげた。


「そう……かしら。でも、私はミカサほど強くないわよ」


 柚子は瑠璃の腕を軽く叩いた。


「そんなことないよぅ~。瑠璃ちゃんは、いつも冷静で頼りになるもん!」


 鏡花もニヤリと笑いながら言った。


「そやそや。瑠璃は強いで。ただ、エレンの代わりに柚子に執着しとるけどな」


 瑠璃は顔を真っ赤にして反論した。


「ちょっと! 何言ってるのよ!」


 柚子は首を傾げた。


「ん? 私に執着? どういうことぅ~?」


 鏡花は面白そうに瑠璃を見つめた。


「ほら、瑠璃。説明してあげぃ」


 瑠璃は慌てふためいた。


「べ、別に何でもないわよ! とにかく、次は鏡花の番でしょ!」


 話題を変えようと必死な瑠璃を見て、鏡花はくすくすと笑った。


「まあええわ。ほな、ウチの番やな」


 鏡花はスマートフォンを手に取り、質問に答え始めた。


「『好きな食べ物は?』……たこ焼きかな」

「『休日の過ごし方は?』ショッピングに決まっとるやん」

「『好きな色は?』ピンクやな」

「『得意な科目は?』まあ、英語かな」

「『理想のデートは?』ライブに行くことやな!」


 柚子と瑠璃は鏡花の回答を聞きながら、時々顔を見合わせて笑っていた。


「鏡花ちゃんって、ほんとにギャルだねぇ~」と柚子が言った。


「ギャルっていうか、かなりオタク入ってるわよね」と瑠璃が付け加えた。


 鏡花は少し照れくさそうに言った。


「うるさいわ! 普通やろ、こんなん」


 最後の質問に答え終わると、鏡花は少し緊張した様子で結果を待った。


「さあ、どないなるんやろ……」


 画面が切り替わり、結果が表示された。


「なんやこれ!? 『NARUTO』の春野サクラ!?」


 柚子と瑠璃は驚きの声を上げた。


「えぇ~!?」

「まさか……」


 鏡花は困惑した表情で画面を見つめていた。


「ウチがサクラ? なんでやねん……。このサイトちょっとおかしいんとちゃうか?」


 柚子は興奮した様子で説明を始めた。


「すごいよぅ~! サクラちゃんって、最初は弱かったけど、どんどん強くなっていくヒロインなんだよぅ~!」


 瑠璃も分析を始めた。


「そうね。見た目は派手だけど、実は真面目で努力家。鏡花にぴったりじゃない?」


 鏡花は少し照れくさそうに頬を掻いた。


「まあ、そない言われたら、悪い気はせえへんけど……」


 柚子は嬉しそうに手を叩いた。


「やったぁ~! みんなの結果が出たよぅ~。どう? 面白かった?」


 瑠璃は少し考え込んだ後、ゆっくりと頷いた。


「そうね。予想外の結果だったけど、なんだか新鮮だったわ」


 鏡花も同意した。


「せやな。ちょっと驚いたけど、なんか楽しかったわ」


 柚子は突然、何かを思いついたように飛び上がった。


「あ! そうだ! せっかくだから、みんなで診断結果のキャラのコスプレしてみない?」


 瑠璃と鏡花は驚いた表情で柚子を見つめた。


「はぁ?」

「また急にそんなこと言い出して……」


 柚子は目を輝かせながら続けた。


「だってぇ~、せっかく自分に似てるキャラがわかったんだし、やってみたいよぅ~」


 瑠璃は少し困った表情を浮かべた。


「でも、衣装はどうするの? 急に用意できないわよ」


 鏡花も腕を組んで考え込んだ。


「そやな。ウチら、そんな本格的なコスプレ衣装持ってへんし」


 柚子は少し考えた後、パッと顔を明るくした。


「大丈夫だよぅ~! 完璧じゃなくても、イメージだけでも楽しいと思うんだぁ~。ねえ、やってみようよぅ~」


 瑠璃はため息をついた。


「もう、柚子ったら……」


 しかし、柚子の熱意に押されて、瑠璃も少しずつ折れ始めた。


「まあ、イメージだけなら……ね」


 鏡花もニヤリと笑った。


「ええやん、やってみようや。どうせ暇やし」


 柚子は嬉しそうに飛び跳ねた。


「やったぁ~! じゃあ、さっそく準備しようよぅ~!」


 3人は部室の衣装箱を開け、中身を探り始めた。様々な衣装や小物が詰まっている中から、それぞれのキャラクターに似たものを探す。


 柚子は青い制服のようなものを見つけ、嬉しそうに取り出した。


「わぁ~! これ、ハルヒの制服に似てるよぅ~!」


 瑠璃は赤いマフラーを見つけ、首に巻いてみた。


「これで少しはミカサっぽくなるかしら」


 鏡花は赤いチャイナ服を手に取り、困惑した表情を浮かべた。


「なんでウチらこんなん持ってんねん……」


 柚子は鏡花に向かって声をかけた。


「鏡花ちゃん、それでいいんじゃない? サクラちゃんっぽい赤だし!」


 瑠璃は冷静に提案した。


「髪型も重要よね。ウィッグはないけど、少し髪型を変えてみたら?」


 3人は鏡の前に集まり、髪型を整え始めた。柚子はポニーテールを作り、瑠璃は前髪を少し短く整え、鏡花は髪を短くまとめた。


 着替えと髪型の変更が終わると、3人は互いの姿を見て驚いた。


「わぁ~! みんなすっごく似合ってるよぅ~!」柚子が歓声を上げた。


 瑠璃は少し恥ずかしそうに自分の姿を見た。


「本当に……これでいいのかしら」


 鏡花は鏡の前でポーズを取りながら言った。


「まあ、なんとなくそれっぽくなったかな」


 柚子は突然、スマートフォンを取り出した。


「ねえねえ、せっかくだから写真撮ろうよぅ~!」


 瑠璃は少し躊躇したが、柚子の熱意に押されて同意した。


「わかったわ。でも、SNSには絶対アップしないでよ?」


 鏡花はニヤリと笑いながら言った。


「そやな。これは秘密の思い出ってことで」


 3人は部室の壁を背景に並んだ。柚子がスマートフォンを持ち、自撮り棒を使って3人が入るようにセットした。


「はい、チーズぅ~!」


 シャッター音が鳴り、3人の笑顔がスマートフォンに収められた。


 写真を確認すると、みんなで歓声を上げた。


「わぁ~! みんなかわいい!」

「意外といい感じね」

「ほんまや、なかなかええ写真やん」


 柚子は急に何かを思いついたように声を上げた。


「あ! そうだ! せっかくコスプレしたんだから、キャラになりきってみない?」


 瑠璃と鏡花は驚いた表情で柚子を見つめた。


「え?」

「なりきる?」


 柚子は興奮した様子で説明を始めた。


「そう! 私はハルヒになりきって、瑠璃ちゃんはミカサ、鏡花ちゃんはサクラになりきるの! きっと面白いよぅ~」


 瑠璃は少し困った表情を浮かべた。


「でも、私、ミカサのセリフとかよく知らないわ」


 鏡花も首をかしげた。


「ウチも、サクラのキャラあんまり覚えてへんわ」


 柚子は明るく笑いながら言った。


「大丈夫だよぅ~。完璧じゃなくていいの。イメージでやってみようよぅ~」


 瑠璃と鏡花は顔を見合わせ、少し戸惑いながらも頷いた。


「わかったわ。やってみましょう」

「ほな、やってみるか」


 柚子は嬉しそうに手を叩いた。


「やったぁ~! じゃあ、私から始めるねぇ~」


 彼女は咳払いをして、急に声のトーンを変えた。


「よーし! SOS団のみんな、今日は新しい超常現象を探しに行くわよ!」


 瑠璃と鏡花は驚いた表情を見せたが、すぐに笑いだした。


「柚子、上手いじゃない」と瑠璃が言った。


「ほんまや、ちょっと似とるわ」と鏡花も付け加えた。


 柚子は嬉しそうに続けた。


「キョン! あんた、なに笑ってるのよ! さっさと準備しなさい!」

「誰がキョンやねん!」

 

 鏡花がすぐに突っ込む。

 瑠璃は少し戸惑いながらも、ミカサになりきろうと試みた。


「エ、エレン……私たちはこの世界で生き抜くのよ……(恥)」


 鏡花はくすくす笑いながら、サクラの真似をした。


「しゃーんなろ! 私だって、ナルトとサスケに負けないくらい強くなってやるわ!」


 3人は互いの演技を見て、大笑いした。


「みんな、意外と上手いねぇ~」柚子が言った。


「まあ、それなりに楽しいわね」瑠璃も少し照れくさそうに答えた。


「ほんま、こんなん久しぶりやわ」鏡花も楽しそうだった。


 黒睡蓮女学院の漫画研究部は今日も平和です。

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