第5話「コスプレしちゃお!」

 黒睡蓮女学院の漫画研究部の部室は、午後の柔らかな日差しに包まれていた。窓から差し込む光が、部屋の中を淡い黄金色に染め上げている。壁には様々な漫画のポスターが貼られ、本棚には整然と並べられた漫画単行本やアニメのBlu-rayが並んでいる。


 柚子、瑠璃、鏡花の3人は、いつものように部室でくつろいでいた。柚子は眼鏡の奥の瞳を輝かせながら、スマートフォンで何かを熱心に見ている。瑠璃は窓際の椅子に座り、膝の上に置いた文庫本を静かにめくっている。鏡花はソファに寝そべり、雑誌を読みながらガムを噛んでいる。


 突然、柚子が声を上げた。


「ねえねえ、みんなぁ~。文化祭のコスプレカフェ、何の衣装にするか決まったぁ~?」


 瑠璃は本から目を離し、柚子を見つめた。


「まだよ。そういえば、来週までに決めないといけなかったわね」


 鏡花も雑誌から顔を上げ、ガムを鳴らしながら言った。


「あかん、すっかり忘れとったわ。どないしよ?」


 柚子は立ち上がり、眼鏡を直しながら笑顔で言った。


「じゃあ、今から考えようよぅ~。みんなでアイデア出し合えば、きっといいの思いつくよねぇ~」


 瑠璃は本を閉じ、真剣な表情で言った。


「そうね。でも、どんなコスプレがいいかしら。文学作品の登場人物とか……」


 鏡花は体を起こし、瑠璃の言葉を遮った。


「いや、それはあかんて。文学作品やと、誰がどの人物かわからへんやろ?」


 柚子は目を輝かせながら提案した。


「じゃあ、アニメやゲームのキャラクターはどうかなぁ~? みんなが知ってるキャラの方が盛り上がりそうだよねぇ~」


 瑠璃は少し考え込んだ後、頷いた。


「確かにそうね。でも、どのアニメやゲームにするか、それも難しいわ」


 鏡花は指をパチンと鳴らし、思いついたように言った。


「せや! 人気のアニメとかゲームから選んだらどうや? 『鬼滅の刃』とか『呪術廻戦』とか、そういうんは皆知っとるやろ?」


 柚子は大きく頷いた。


「うんうん、いいアイデアだねぇ~。私も『鬼滅の刃』大好きだよぅ~。禰豆子ちゃんのコスプレしてみたいなぁ~」


 瑠璃は少し困ったような表情を浮かべた。


「でも、人気作品だと他のクラスや部活でもやりそうよね。せっかくだから、もう少し珍しいものの方がいいんじゃないかしら」


 鏡花は瑠璃の言葉に同意した。


「せやな。でも、あんまりマイナーすぎても誰も気づいてくれへんし……」


 柚子は突然、何かを思いついたように飛び上がった。


「あ! そうだ! 私たちは漫研だから、漫画家さんのコスプレはどうかなぁ~?」


 瑠璃と鏡花は驚いた表情を見せた。


「漫画家さん?」

「漫画家……?」


 柚子は嬉しそうに続けた。


「そう! CLAMPさんとか、荒木飛呂彦先生とか、冨樫義博先生とか……漫画好きの人なら絶対にわかるよねぇ~」


 瑠璃は少し考え込んだ後、ゆっくりと頷いた。


「なるほど。確かに面白いアイデアね。でも、漫画家さんって普段の姿があまり知られてないから、コスプレが難しそう……」


 鏡花も腕を組んで考え込んだ。


「せやな。でも、有名な漫画家さんやったら、テレビ出演とかしとるし、なんとかなるんちゃう?」


 柚子は急に思いついたように声を上げた。


「あ! そうだ! 瑠璃ちゃん、コスプレ詳しいんだよねぇ~?」


 瑠璃は突然の質問に驚いた様子で、少し顔を赤らめた。


「え? 私? 別に……そんなに……」


 鏡花は興味深そうに瑠璃を見つめた。


「ほんまか? 瑠璃、コスプレ詳しいんか?」


 瑠璃は恥ずかしそうに目を伏せながら答えた。


「ま、まあ……ちょっとだけね。たまにイベントに行ったりするくらいよ」


 柚子は目を輝かせながら瑠璃に近づいた。


「すごーい! 瑠璃ちゃん、どんなコスプレしたことあるのぉ~?」


 瑠璃は柚子の熱心な様子に押されて、少しずつ話し始めた。


「え、えっと……『涼宮ハルヒの憂鬱』の朝比奈みくるとか……『カードキャプターさくら』の木之本桜とか……」


 鏡花は驚いた表情で声を上げた。


「まじか! 瑠璃、そんな可愛いキャラのコスプレしとったんか!」


 瑠璃は顔を真っ赤にしながら、慌てて言い訳をした。


「べ、別に! たまたまフレンドに頼まれて……」


 柚子は瑠璃の腕にしがみつき、興奮した様子で言った。


「ねえねえ、写真見せてよぅ~! 絶対可愛いに決まってるよぅ~!」


 瑠璃は困ったような表情を浮かべながら、柚子を軽く押しのけた。


「だ、ダメよ! 恥ずかしいから……」


 鏡花はニヤリと笑いながら言った。


「まあまあ、そない言わんと見せてくれよ。ウチらだけやし」


 瑠璃は観念したように深いため息をついた。


「わかったわ……でも、絶対に他の人には見せないでよ?」


 柚子と鏡花は同時に頷いた。


「約束するぅ~!」

「任しといて!」


 瑠璃はおずおずとスマートフォンを取り出し、画面を操作し始めた。少しして、彼女は恥ずかしそうに画面を柚子と鏡花に向けた。


 画面には、可愛らしい制服を着た瑠璃の姿が映っていた。いつもの短髪ではなく、長めのウィッグをつけ、大きな瞳のカラーコンタクトをしている。普段のボーイッシュな印象はどこにもなく、まるで別人のような可愛らしさだった。


「わぁ~! 瑠璃ちゃん、超可愛いよぅ~!」


 柚子は目を輝かせながら叫んだ。


「ほんまや! 瑠璃、こんな可愛い子やったんか!」


 鏡花も驚きの声を上げた。


 瑠璃は顔を真っ赤にしながら、慌ててスマートフォンを引っ込めた。


「も、もういいでしょ! 恥ずかしいわ……」


 柚子は瑠璃にぴったりとくっつき、嬉しそうに言った。


「瑠璃ちゃん、すっごく可愛かったよぅ~。もっと見せてほしいなぁ~」


 瑠璃は柚子の接近に動揺しながらも、なんとか冷静を装った。


「だ、ダメよ。これ以上は……」


 鏡花はニヤニヤしながら二人を見つめていた。


「まあまあ、そないに言わんと、瑠璃。せっかくやし、もうちょい見せてくれへんか?」


 瑠璃は観念したように深いため息をついた。


「わかったわよ。でも、これが最後よ?」


 彼女は再びスマートフォンを操作し、別の写真を表示した。今度は『カードキャプターさくら』の衣装を着た瑠璃の姿だった。ピンク色のドレスに身を包み、大きな杖を持っている。


「わぁ~! さくらちゃんだぁ~! 瑠璃ちゃん、ほんとに似合ってるよぅ~!」


 柚子は興奮のあまり、瑠璃に抱きついてしまった。


「きゃっ! ちょ、柚子!」


 瑠璃は慌てふためいたが、内心では柚子の抱擁に幸せを感じていた。


 鏡花は二人の様子を見て、くすくすと笑った。


「ほんまに瑠璃、別人みたいや。もしかして、普段からメイクとかしとるんか?」


 瑠璃は柚子から離れると、少し恥ずかしそうに答えた。


「ま、まあね。コスプレのときは特に気を使うわ。ファンデーションの塗り方から、アイシャドウの色の選び方、つけまつげの付け方まで……」


 柚子は目を輝かせながら瑠璃の話に聞き入った。


「すごーい! 瑠璃ちゃん、化粧のこともよく知ってるんだねぇ~。私、あんまり詳しくないから教えてほしいなぁ~」


 鏡花も興味深そうに瑠璃を見つめた。


「ウチも知りたいわ。いつも適当にしかしてへんし」


 瑠璃は少し照れくさそうに微笑んだ。


「別に大したことないわよ。でも、コツはあるわね。例えば、ファンデーションは……」


 瑠璃は詳しく化粧の手順を説明し始めた。彼女の話す姿は、普段の冷静沈着な様子とは違い、生き生きとしていた。


 柚子と鏡花は、瑠璃の説明に熱心に聞き入った。時折、質問を投げかけたり、驚きの声を上げたりしながら。


「へぇ~、アイラインって引く位置で印象が全然変わるんだねぇ~」

「ほんま? ウチ、いつも適当に引いとったわ」


 瑠璃は二人の反応に嬉しそうな表情を浮かべながら、さらに詳しく説明を続けた。


「そうよ。目の形に合わせて、少し工夫するだけで印象がガラリと変わるの。例えば……」


 彼女は自分のスマートフォンで写真を見せながら、様々なアイメイクの違いを解説した。


 柚子は目を輝かせながら言った。


「瑠璃ちゃんってほんとに詳しいねぇ~。私もこんな風にメイクできたらなぁ~」


 鏡花もうなずきながら付け加えた。


「せやな。ウチも勉強になったわ。次のコスプレの時に使えそうや」


 瑠璃は少し照れくさそうに髪をかきあげた。


「別に……みんなも練習すれば、すぐにできるようになるわよ」


 柚子は突然、何かを思いついたように飛び上がった。


「あ! そうだ! 瑠璃ちゃん、私たちにメイクしてよぅ~!」


 瑠璃は驚いた表情を浮かべた。


「え? 今?」


 鏡花も興味深そうに瑠璃を見つめた。


「ええやん、それ。ウチも瑠璃にメイクしてもらいたいわ」


 瑠璃は少し戸惑いながらも、ゆっくりと頷いた。


「わ、分かったわ。でも、ここにはあまり道具がないから……」


 柚子は嬉しそうに手を叩いた。


「大丈夫だよぅ~。私、いつも化粧ポーチ持ち歩いてるからぁ~」


 柚子は自分のバッグから、可愛らしい柄のポーチを取り出した。中には様々なコスメ用品が詰まっていた。


 瑠璃は少し驚いた様子で言った。


「へぇ、柚子ってけっこう持ち歩いてるのね」


 鏡花も自分のバッグを漁り始めた。


「ウチも少しは持っとるで。ほら、これとか」


 彼女は小さなパレットを取り出した。


 瑠璃はため息をつきながら、しかし少し嬉しそうに言った。


「わかったわ。じゃあ、やってみましょうか」


 柚子は興奮して飛び跳ねた。


「やったぁ~! 瑠璃ちゃんにメイクしてもらえるなんて、夢みたい!」


 瑠璃は顔を赤らめながら、柚子に近づいた。


「じゃあ、まずは柚子からね。目を閉じて」


 柚子は言われた通りに目を閉じた。瑠璃は柚子の顔を覗き込むようにして、慎重にファンデーションを塗り始めた。


「柚子の肌、すごくきれいね。あまり厚塗りする必要がないわ」


 柚子は目を閉じたまま、嬉しそうに微笑んだ。


「えへへ、ありがとぅ~。瑠璃ちゃんの指、温かいねぇ~」


 瑠璃は柚子の言葉に、さらに顔を赤くした。


「……静かにしていて。集中できないわ」


 鏡花は二人の様子を見て、くすくすと笑った。


「おいおい、なんやこの雰囲気。まるで恋人同士みたいやないか」


 瑠璃は慌てて言い返した。


「な、何言ってるのよ! 普通に化粧してるだけじゃない」


 柚子は目を閉じたまま、首を傾げた。


「えぇ~? 恋人同士ぅ~? 私、瑠璃ちゃんと恋人になれたらうれしいなぁ~」


 瑠璃は一瞬、手を止めた。


「ちょ、冗談はやめてよ、柚子」


 鏡花はニヤリと笑いながら言った。


「まあまあ、瑠璃。真に受けんでもええって。ほら、続きやってや」


 瑠璃は深呼吸をして、再び柚子のメイクを続けた。アイシャドウを塗り、アイラインを引き、最後にマスカラをつけた。


「はい、終わったわ。目を開けて」


 柚子はゆっくりと目を開け、鏡を手に取った。


「わぁ~! すっごく可愛い! 瑠璃ちゃん、天才!」


 鏡に映る自分の姿に、柚子は目を輝かせた。普段よりも目が大きく見え、顔全体が明るく華やかな印象になっていた。


 鏡花も覗き込んで言った。


「おお~、ほんまに可愛なってるやん。瑠璃、やるやん」


 瑠璃は少し照れくさそうに髪をかきあげた。


「別に……コツを掴めば、誰でもできるわよ」


 柚子は瑠璃に抱きついた。


「瑠璃ちゃん、ありがとうぅ~! 大好き!」


 瑠璃は顔を真っ赤にしながら、柚子を軽く押しのけた。


「もう、やめてよ。次は鏡花の番よ」


 鏡花は椅子に座り、目を閉じた。


「よろしゅう頼むで~」


 瑠璃は鏡花のメイクを始めた。ギャル風の濃いメイクに慣れているだけに、ナチュラルなメイクは新鮮だった。


「鏡花は普段濃いめだから、今日はナチュラルにしてみるわね」


 鏡花は目を閉じたまま頷いた。


「おう、任せたで」


 瑠璃は丁寧にファンデーションを塗り、薄めのアイシャドウを選んだ。アイラインは細めに引き、マスカラもナチュラルなものを使った。


「はい、終わったわ」


 鏡花は目を開け、鏡を覗き込んだ。


「おお~! なんやこれ、めっちゃいつもとちごて違和感あるわ~。でも、ええ感じやな」


 普段のギャルメイクとは違い、鏡花の素顔の良さが引き立つナチュラルメイクになっていた。


 柚子は感嘆の声を上げた。


「わぁ~、鏡花ちゃん、超可愛い! まるで別人みたい!」


 鏡花は照れくさそうに頬をかいた。


「ほんま? なんか恥ずかしいわ~」


 瑠璃は満足そうに微笑んだ。


「これくらいナチュラルな方が、鏡花の素の良さが出るわよ」


 柚子は突然、何かを思いついたように声を上げた。


「あ! そうだ! せっかくだから、みんなでコスプレの写真撮ろうよぅ~!」


 鏡花は目を輝かせて賛同した。


「ええやん、それ! 瑠璃のコスプレも見たいし!」


 瑠璃は少し困ったような表情を浮かべた。


「え? でも、衣装がないわよ」


 柚子は明るく笑いながら言った。


「大丈夫だよぅ~。私、いつもコスプレ衣装を持ち歩いてるんだぁ~」


 瑠璃と鏡花は驚いた表情で柚子を見つめた。


「はぁ?」

「ポーチはわかるけど、なんでコスプレ衣装持ち歩いとんねん!」


 柚子は得意げに大きなバッグを取り出した。


「えへへ、実はね、明日コスプレイベントに行く予定だったんだぁ~。でも、急用が入っちゃって……」


 彼女はバッグを開け、中から何着かの衣装を取り出した。


「わぁ、これ全部衣装なの?」と瑠璃が驚いた様子で尋ねた。


「うん! みんなで着てみようよぅ~」


 鏡花は興味深そうに衣装を手に取った。


「おお、これ『ラブライブ!』の衣装やん。ウチ、にこちゃん好きやわ」


 瑠璃もつられて衣装を見始めた。


「これは……『魔法少女まどか☆マギカ』?」


 柚子は嬉しそうに頷いた。


「そう! 瑠璃ちゃんはほむらちゃんの衣装が似合いそうだよねぇ~」


 瑠璃は少し困ったような表情を浮かべた。


「え? 私が着るの?」


 鏡花はニヤリと笑いながら言った。


「ええやん、ええやん。せっかくやし、みんなで着てみようや」


 柚子は瑠璃の手を取り、懇願するような目で見つめた。


「お願い、瑠璃ちゃん! 絶対似合うよぅ~」


 瑠璃は柚子の熱心な様子に押され、ため息をついた。


「わかったわ。でも、ちゃんと着付けてよ」


 柚子は嬉しそうに飛び跳ねた。


「やったぁ~! 任せてぇ~!」


 3人は次々と衣装を着替え始めた。柚子は『ラブライブ!』の高坂穂乃果、鏡花は矢澤にこ、瑠璃は『魔法少女まどか☆マギカ』の暁美ほむらの衣装を着ることになった。


 着替えている間、部室には女子高生特有のはしゃぎ声と笑い声が響いた。


「きゃー! 鏡花ちゃん、そのスカート短すぎぃ~」

「うるさいわ! にこちゃんの衣装やからしゃあないやん」

「瑠璃ちゃん、タイツの履き方わかる? 手伝おうか?」

「大丈夫よ。自分でできるわ」


 しばらくして、3人は衣装を着終えた。鏡を覗き込んで、お互いの姿を確認し合う。


「わぁ~! みんな可愛い!」柚子が歓声を上げた。


 鏡花は少し恥ずかしそうに自分の姿を見た。


「ほんまに……こんなんでええんかな」


 瑠璃は静かに立ち尽くしていたが、柚子が彼女の元へ駆け寄った。


「瑠璃ちゃん、超似合ってる! ほむらちゃんそっくり!」


 瑠璃は顔を赤らめながら、小さな声で言った。


「そ、そう?」


 鏡花もニヤリと笑いながら言った。


「ほんまや。瑠璃、めっちゃ可愛いで」


 柚子は突然、スマートフォンを取り出した。


「よーし、みんなで写真撮ろう!」


 3人は部室の壁を背景に並んだ。柚子が三脚を設置し、タイマーをセットした。


「はい、チーズぅ~!」


 シャッター音が鳴り、3人の笑顔がスマートフォンに収められた。


 写真を確認すると、みんなで歓声を上げた。


「わぁ~! みんな可愛い!」

「ほんまや、なんかアイドルみたいやな」

「……意外といい写真ね」


 柚子は急に何かを思いついたように声を上げた。


「あ! そうだ! この写真、文化祭のポスターに使わない?」


 瑠璃と鏡花は驚いた表情で柚子を見つめた。


「え?」

「ポスター?」


 柚子は興奮した様子で説明を始めた。


「そう! 私たちのコスプレカフェのポスターだよぅ~。こんな風に可愛く撮れたし、絶対人気出るよねぇ~」


 鏡花は少し考え込んだ後、頷いた。


「なるほど。確かにええアイデアかもしれんな」


 瑠璃は少し躊躇しながらも、ゆっくりと頷いた。


「まあ、みんなが良ければ……いいわよ」


 柚子は嬉しそうに両手を叩いた。


「やったぁ~! じゃあ、もっといろんなポーズで撮ろう!」


 3人は次々とポーズを変え、様々な表情で写真を撮り続けた。部室には楽しそうな笑い声が響き渡り、時間が過ぎるのも忘れてしまうほどだった。


 そんな中、突然ドアが開いた。


「おい、まだいたのか。もう遅いから帰……」


 顧問の多聞先生が言葉を途中で止めた。目の前には、アニメキャラクターの衣装を着た3人の生徒が立っていた。


「……どういう状態だ?」


 多聞先生は呆然とした表情で3人を見つめた。


 瑠璃、柚子、鏡花は凍りついたように立ち尽くしていた。部室には気まずいな沈黙が流れた。


 しかし、その沈黙を破ったのは意外にも多聞先生だった。


「ふむ……お前ら、なかなかいいな!」


 3人は驚いた表情で多聞先生を見つめた。


「え?」

「はぁ?」

「ほんまに?」


 多聞先生は楽しそうに笑いながら言った。


「本当になかなかいいじゃないか。文化祭のコスプレカフェの準備か? なら、私も参加させてもらうとするかな!」


 3人は目を丸くして多聞先生を見つめた。


「「「えええええ!?」」」


 黒睡蓮女学院の漫画研究部は今日も平和です。

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