第2話「推しへの愛と神の愛の関係について」
いつもの放課後の部室。
「今日はぁ~、推しへの愛と神の愛の関係についてみんなに訊きたいんだぁ~」
「「は?」」
柚子の突然の問いかけに瑠璃と鏡花は目を点にした。
「だからぁ~、推しへの愛がアガペーかフィリアかエロスかってことなのぉ~」
「ア、アガ……フィ、フィリ……?」
「なんやねん、それ」
「アガペーは神の愛、フィリアは友愛、エロスは……肉体の愛なんだよぉ~!」
なぜかエロスを強調して説明する柚子。妙に嬉しそうだ。なんでやねん。
「あー、なるほどそういうことね。確かに私たちが推しに対して感じる愛って、どれなんだろう?」と瑠璃が考え込む。
「推しは私達の信仰心とか、精神性とかも育んでくれる存在だから、アガペーの要素もあると思うわ。信仰心からお布施とかもするしw」
「でも、私たちの推しは、友達みたいな存在でもあるじゃない? だから、フィリアの要素もあると思うー」
「まあ、確かにそうかもしれへんな。推しと一緒にいると、友達と一緒にいるような気分になるときもあるし」
「そうそう、でも、やっぱり最初は見た目に惹かれた部分もあるじゃない? だから、エロスの要素もあると思う」
「推しのイケメン度やかわいさに惹かれるのもぉ~、エロスの要素があるかもしれないねぇ~」
「あはは、でもでも、推しの中身も大事だよね。だから、神の愛や友愛の要素も大切だよ」
「結局推しに対する愛って、アガペーとフィリアとエロスが入り混じっているのかもしれへんな。人間って複雑な生き物やし」
「まあ、そういうことかもしれないね。でも、どんな愛でも、大切にしていけばいいんじゃない?」
「推しとの愛は、どんな形でも、心を豊かにしてくれるもんねぇ~」
「でもあたしは最終的にはアガペーや思うわ。推しに対しては、いつも神秘的で高貴な感情を抱いている気がするねん」と鏡花が答える。ギャルっぽい見た目に反して、ある意味ストイックな回答だ。
「私は最終的にはフィリアかなぁ~。推しとの共通点を見つけて、それを通じて親しくなりたいって思うからぁ~」と柚子が笑顔で言う。
「私は……エロスかしら?」と瑠璃が恥ずかしそうに言う。
「えええ!?」と柚子と鏡花が一斉に驚く。そしてまじまじと瑠璃の顔を見つめた。
「あ、ごめん、今のなし! なし! あたしもアガリクス! アガリクスだよ!」
「アガペーやろ。なんやねん、アガリクスて。きのこやん。んで、ちょっとエロス入ってるやん」
ばたばたと手を振って自らの発言を否定する瑠璃に対して、鏡花が冷静に突っ込みを入れる。
「そうだよねぇ~。推しに惹かれる気持ちって、エロスの要素もあるかもしれないけど、それが悪いわけじゃないんだよねぇ~」と柚子が感慨深げに言う。
「たとえば、推しの声や仕草にドキドキしちゃうとか、そういうのってエロスじゃないですかぁ~」と柚子がニコニコしながら続けた。
「そうや!」
とつぜん鏡花が何かを思い出したように手を叩いた。
「瑠璃の柚子に対する愛はどれやねん? アガペーか、フィリアか、それとも……エロスかいな?」
「ちょ、急に何言ってんのよ、鏡花!」
「やっぱエロスやな~、エロスやろ~」
「ちょっと鏡花ー!」
慌てて鏡花の口を塞ごうとする瑠璃。それをきょとんとした顔で見つめる柚子。
黒睡蓮女学院の漫画研究部は今日も平和です。
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