黒睡蓮女学院漫画研究部の日常
藍埜佑(あいのたすく)
第1話「昆虫食」
「~♪」
ているのが目に入った。
「ゆーずー、何食べてんのー? 美味しそうじゃーん」
「ん? コオロギだよぉ~」
「!?」
後ろから柚子に抱き着いた瑠璃だったが、一瞬にして彼女から離れ、部室の壁にぴったりと密着する。
「こ、コオロギ!? む、虫じゃん!?」
「そうだよぉ~、ぱりぱりして美味しいよぉ~、瑠璃ちゃんも食べるぅ~?」
「ひっ!?」
ニコニコしながらコオロギを差し出してくる柚子と全力で回避する瑠璃。ここに一大コオロギ戦争が始まった。逃げ惑う瑠璃と無邪気にコオロギを薦めてくる柚子。終わらない追いかけっこである。
こんなのどっかで観たことあるな。あ、トムとジェリーだ。
「お前ら何してんねん? ぎゃーぎゃーぎゃーぎゃーうっさいのぅ~」
そこに
「鏡花ちゃん、ねぇねぇ、コオロギって食べたことある?」と、柚子が鏡花に話しかける。
「えっ、コオロギ!? そ、そんなもん、人間の食べもんやあれへんで!」と、鏡花が顔をしかめる。
「でも、最近は昆虫食っていうのが流行っているらしいんだよねぇ~」と、柚子が話を続ける。
「それ……そんなに美味いんか?」と、鏡花は恐る恐る柚子に尋ねる。。
「私は、サソリの唐揚げとか、カブトムシの幼虫の天ぷらとか、食べたことあるけど、意外と美味しいんだよぉ~」と、柚子がにっこり笑う。悪魔のような天使の笑顔である。
「え、マジで!?」と、鏡花が驚く。
「でも、ゴキブリはちょっと嫌かなぁ~」と、柚子がちょっと苦笑する。可愛い。
「あ、当たり前やろ! まさか柚子、ゴキブリとか食うてへんよな!? もしそんなもん食うてんのやったら絶交やで!」と、鏡花が全身を震わせる。
「でも、昆虫食って、環境にもいいし、栄養にもいいんだってぇ~」と、柚子が話を続ける。
「そりゃそうかもしれへんけど……あたしには絶対無理やわぁ~」と、鏡花が小さくため息をつく。しかしそこで何かを思いついたようにニヤリとし、瑠璃に話しかける。
「なあ、瑠璃。もし柚子がお前のためにサソリの唐揚げとか作ってくれたらそれ食べられるか?」
「え!? 柚子が!? サソリの唐揚げ……!?」
壁にくっついていた瑠璃が一瞬複雑な表情を浮かべた。
「サソリ……でも、柚子の手料理なら……いやいやいやでもサソリだし! ……でも、柚子があたしに、あーん、ってして食べさせてくれたらワンチャン……っていうかかなりいいかも……! でもでも、サソリって毒あるし……!」
なぜか頬を紅に染めてもじもじしだす瑠璃。それを見てさらにニヤニヤとする鏡花。
「はぁーい、瑠璃ちゃん、あーんってして、コオロギだよぅ~」
「はい、あーん! ……はっ!?」
一瞬のスキを突いてコオロギを瑠璃の口に放り込む柚子。おそるおそる咀嚼しながらも瑠璃の顔色がどんどんと青ざめていく。
「やっぱ無理ぃ~~~!!」
瑠璃の絶叫が部室に響く。
黒睡蓮女学院の漫画研究部は今日も平和です。
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