第12話確信
俺は彩夏に背を向けて逃げるように駅の階段を降りていった。彩夏のあの光を失った虚ろな瞳が脳裏に焼き付いて離れない。
(一体どうしたっていうんだ…。)
駅から少し離れたところまで逃げればもう大丈夫だろう。息が苦しく、心臓の鼓動もかなり早くなっている。
スマホを開くと、沙友理と春夏、紗枝、小花からメールが届いていた。
沙友理からは
「今度の土曜日楽しみだな〜」
「ゆうくんのおかげで学校がんばれる」
「ゆうくん、してほしいことがあったらなんでも言ってね。私が全部叶えるから。」
相変わらずハートが大量に付いた文面で送られてきた。
小花からは
「優吾くんみたいな神様と話せるの嬉しい…」
「優吾くん、これからもずっと仲良くしようね」
「優吾くんとデート行きたいな…」
という内容が。
紗枝からは
「何か酷いことをされたらいつでも言ってね。どんな手をつかってでも潰してあげるから。」
春夏からは
「私は優吾のことを誰よりも知ってるよ?」
「優吾、大好き」
という内容のメールが届いていた。だが、今の俺には返事をする気力が無い。そして、何より彩夏だけではなく、沙友理達にも薄々恐怖を覚え始めている。
もしかすると俺はとんでもない子達に好かれてしまったのかもしれない。
俺は急いで家に帰ると、スマホを置いて課題に取り掛かった。今はとにかく1人の時間がほしかった。
恐怖を感じたとはいえ、冷静に考えてみれば沙友理も春夏も彩夏も紗枝も心花もみんな大切な友達だ。嫌いになんてなれない。それに、みんな俺と話をすると凄く嬉しそうにしてくれる。近頃は少し怖いと感じることもあったが、何よりも彼女らを可愛いと感じることの方が圧倒的に多い。
みんなこんな俺に対して本心をさらけ出してくれる。何より、必要としてくれる。そう考えると先程の恐怖は無くなっていった。
「さて…メールを返すか。」
俺は独り言を呟いて一人一人にメールを返していった。数える間もなく直ぐに付く既読。あっという間に返事が返ってきた。
「今は放っておいて明日返せばいいか。」
そう言って俺はSNSを閉じて息抜きにRPGゲームを始めたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます