第二十九話 証人喚問
ローズは、中央にデンと座っている。
しかも、腕を組んで。
正面には、
その隣には、私。
私の隣には、シャトレーヌが座った。
「シャトレーヌさん。シャトレーヌさんの席は、こちらですわよ」
ローズは、隣の席をトントンと叩いて、移動を即す。
「えええぇ。だってぇ」
仕方なく移動するシャトレーヌ。
(ああ、シャトレーヌ。あなたは、いつも私の味方。私に優しい。行かないで)
ごめんねぇという顔をしながら、ローズの隣の席に移動する。
「あの、ローズさん、これは、何のー?」
だって、先ほどまで寝ていたんだから。
「『何の?』ですって。シャトレーヌさん」
「アハハ。そうねぇ。でも、ほらぁ、起きて急にだし、説明も。ね?」
苦笑いをしながら答えるシャトレーヌ。
「
急にお嬢様言葉になるローズ。
いつも、お城では、あんな風に話しているんだろうか?
「ええ? 終わらせるつもりだよ」
「よろしい。では、3冊目は、どんな内容になります?」
「え? そ、それは、今、ここでは、話せないな」
急にしどろもどろになる
「『話せないよ』ですって。シャトレーヌさん」
「うん。色々と構想中だから、なんじゃないかなぁ? ね、ね? そうでしょ?」
優しくフォローしてくれるシャトレーヌ。
だが、シャトレーヌも、何となく
「異世界からの恋文編。次が、告白編と来ましたら、次に来るのは当然
「いや、あのー。……。はい。そうです」
「それで、昨夜は、何も無かったと」
「え? 何でそれを」
「聞いているのは、こちらです!」
パンと机を軽くたたいて、叱るローズ。
「はい。何もありませんでした。リリィが疲れているようだったので、先に寝かせました」
「優しいですわね。では、私達が出ていった後、直ぐに寝かせたと……」
「いや。しばらくは、小説を書いていて。リリィさんは、語彙を増やすと言って、辞書を見て勉強してくれてました」
「はぁ? それで?」
「その後は、あのー。ちょっと話をしている内に、リリィさんも疲れてきた様子だったので、寝室へ……」
その言葉を聞いた途端、ローズは、大きな声で叫んだ。
「はぁ? 過程をすっ飛ばして、『事』に及んだのですか? 鬼畜ですか? リリィちゃんに薬でも飲ませたのですか?」
「ローズ、本当だ。眠くなってしまったので、連れていってもらっただけだ。
思わず私が答えたが、しかし、『事』って何だ?
「いや、本当に、何もしていない」
必死に言い訳する
「逆に、何もしなかったのですか?」
「え? それで、怒られるんですか?」
「
ローズの言葉が変だ。何を動揺しているのだ?
「いやー。最悪、無くても大丈夫かなーなんて……」
「駄目ですよ。それは」
と、
「ローズ、シャトレーヌ。何を怒っているか、良くわかっていないが、こんな生活が続くだけでも、私は十分、幸せに暮らせているぞ」
「駄目!」
ローズとシャトレーヌが、声を合わせて怒る。
「えーと、御免なさい、リリィちゃん。リリィちゃんがピンと来ないのは仕方がないことですわ。普通の生活をなさっておりませんので。でも、
ローズは、
「
シャトレーヌは、優しくフォローしてくれる。
「はい。良く。わかります」
と、言いながらうな垂れる
「うーん」
ローズは、目を閉じ、腕を組んで唸っている。
「……、場所の問題かぁ?」
(何だ、そのおじさんみたいな言い方は? 場所? 場所が、関係あるのか?)
私は、3人が、何について話をしているかが、今1つ掴めずに困っていた。
だが、
その伝えたいことが、小説と関係あるのだろうか?
ローズは、原因を見つけたようだ。
とりあえず、場所が良くなかったと考えたようだ。
「何で、場所がいけないと言っているんだ?」
聞いても、三人ともちゃんと答えてくれない。
フェイスがやってくるまで保留となった。
それまでは、場所の選定をローズ閣下とシャトレーヌ軍師が協議されるらしい。
小説の文章で、気に入る書き方が決まらないのだろうか?
しかし、たまに自分の書いた文章を見て、顔を赤くして書き直している。
(何をしているんだ?
食事の時間になると、フェイスも屋敷にやって来た。
「二人とも、早く来てたんだね?」
挨拶もそこそこに、朝食を終えて、ひと段落する。
「大丈夫?」
私は心配になり、声を掛けた。
「ダイジョブ。ダイジョブ」
変な口調になっている。
しかし、体の具合が悪いという感じではないようなので、ひとまずは安心した。
「どーしたのかな?
フェイスが尋ねる。
「うん。例の部分が。あのね」
「……」
要領を得ない返事で、困惑する様子のフェイス。
「フェイス。詳しいことは後で話しますわ。その為、また二人にお出かけして頂きたいの。その話をしたいわ」
ローズが、会話に割って入って来た。
「え? 何をしに出掛けるの?」
「何をって、あれですわよ。」
「あれって?」
「もう!」
そう言って怒ると、ドンっと机に2冊の
「ああー」
フェイスは、それだけで察したらしい。
「この小説は、完全な創作じゃないから、そうだよなぁ。で、小説家大先生は、困り果てているというのか?」
「フェイスは、分かるのか? 私は、何をすれば良いんだ?」
私は、自分だけ取り残されている感じがして寂しいので、教えてもらおうと尋ねた。
するとフェイスは、ニッコリ笑って、こう言う。
「大丈夫だよ、リリィさん。きっと良い話になる。ちょっとした儀式みたいなものだけど、ずっと大切な思い出になることだ。
そう言うと、フェイスは、ローズとシャトレーヌの方に顔向ける。
「で、もう場所とか、適当なところはあるのかな?」
「街中も考えたんだけど。やっぱり、前に行った古いお城が良いと思うの」
と、ローズ。
「人の気配が、多くない方が良いと思って。リリィさんは心配性だから、また剣を持って行こうとするし」
と、シャトレーヌ。
「でも、あそこでは、食べたり、気晴らしすることが出来ないよ。お城と公園しかないし」
「だから、あなたにお願いが……」
ローズが言う。
「わかった。わかったよ。街中みたいには出来ないだろうけど、ゆっくり食事と気晴らしが出来る様には用意出来るだろう」
「助かるわ」
何か、話が丸くまとまった。
だが、その最中に、街へ行った時に一緒について来てくれたメイドが呼ばれた。
メイドさんは、話を聞いては嬉しそうな顔をし、ニコニコしながら答えている。
褒められているのか
(
私は、少し、もやっとした。
その様子を見ていたら、私は、ローズ達と部屋に連れられて、衣装選びとなった。
部屋では、行く当人の私よりも、二人の議論は白熱する。
私は、服のことで悩むことなんて無かったから、そこまで白熱する意味がわからなくて困った。
(いったい、何が始まるのだ?)
声に出しては、聞けなかった。
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