第4話 アルバイト
夏休みになったが、玲依は平日と土曜日にバイトが入っている。日曜日は空けておいた。月曜日になり、朝7時30分に起床した。今日は平日だが、夏休みだからバイトをできるようにしてくれた。バイトの時間まで、1時間30分ある。シャワーを浴びて、朝食に食パン、ゲームをしてからバイトの準備をした。歩いて駅まで行き、西宮白駅方面の電車に乗り込んだ。学校のときより遅い9時だから、電車はあまり混雑していなかったおかげで、バイト先のスーパーマーケットに予定より早く着いた。
開店時は10時なので、それまで店内の掃除や商品を棚に並べる作業を、手分けして行なった。開店時間まであと20分ほどあったので、お店の周りを掃除した。枯れ葉がたくさん散らばっていたので、端に寄せ落ちていたゴミを拾った。開店時間になり、店のドアが開いた。数人のお客さんが入ってきた。
「いらっしゃいませ!」
と、店員一同で元気よく挨拶をした。お客さんは、今日の特売のチラシと買い物カゴを持って、店内を歩きまわっている。時間が経つにつれ、お客さんが増えてくる。玲依がサービスカウンターで作業をしていると、突然
「おい!」
バイトの先輩かと思い振り返ると、そこには目出し帽を顔につけ、大きなカバンを持った大男がいる。
「金を出せ!急いでこの中に詰め込め!早く!」
「は、はい!わかりました!」
ナイフを玲依に向け金を要求してくる。玲依は怖くなり、手が震えながらお金を詰めていく。近くにいた店員や騒ぎを聞きつけた店長が駆けつけてきて、手伝ってくれた。周りのお客さんや店員は警察に通報してくれた。10分後、パトカーのサイレン音が近づいてくる。強盗は焦りながら、
「おい、まだか!早くしろ!早く!」
急いで、レジにあったお金を全て詰めた。そして、お金の入ったカバンを渡そうとした時、
「おい、強盗犯!店の中にいるのはわかってる。もう店の周りを包囲した!大人しく出てこい!お前の逃げ場はもうなくなった!諦めて店の外に出てくるんだ!」
と、外から警察の声が聞こえた。警察が言っていた通り、お店の周りは包囲したらしい。入り口と裏口しか出口はない。玲依は強盗犯にカバンを渡すと同時に言葉を放った。
「強盗さん、もう逃げ場はないみたいですし、諦めて警察のところに行った方が良いと思いますよ。」
涙を流し、手を震わせながら頑張って言った。
「うるせぇ!殺すぞ!」
といい、持っていたナイフで玲依の腕を切った。その瞬間周りにいたお客さんや店員は悲鳴をあげ泣き出した。玲依は状況を読み取れず、切れた腕を眺めながら涙を流した。すると、やっと状況が読み取れたのか泣き叫んだ。強盗犯は更に焦り、強盗犯まで泣いてしまった。その時、警察官らが盾を構えながら駆け込んできた。警察官らが泣いている強盗犯を見ると、警察の1人がゆっくりと近づき、手錠を掛けた。玲依は救急隊員に救急車まで連れてかれ、近くの病院に救急搬送されて行った。犯人はそのまま、パトカーに乗り警察署に連行された。
玲依は、腕の傷が深かったのでしばらく入院することになった。話を聞いた玲依のお母さんと彼女が心配してすぐにお見舞いに来てくれた。
「玲依大丈夫?怖かったよね―。犯人を許せないわね!」
母がそう言い、続けて彼女も話し出した。
「玲依くん!大丈夫?私、強盗に刺されて入院してるって聞いて、めっちゃ心配したよー。私まで泣いちゃったもん。」
美波は目から涙が滲み出てきたので、抱きしめた。空気を読んでくれて、部屋から出ていってくれた。玲依と美波は抱き合いながら泣いた。
次の日には、仲のいい友人がお見舞いに来てくれた。美波は毎日来てくれた。お見舞い来てくれてありがとう、いつもそう言った。
あれから3週間後、退院と同時に警察から連絡が来た。どうやら強盗犯は裁判の結果7年の懲役が処されたそうだ。後日、慰謝料を頂いた。玲依たちは、強盗犯にはしっかりと罰を受けてほしい、ちゃんと反省してほしい、と思った。
それから1年半が経ち、もうすぐで卒業を迎えようとしていた。玲依は大学に進学せずに就職する。高校を卒業したら、自動車の免許を取りに行くと決めている。楽しかった3年間の高校生活、みんなとお別れしたくないけど卒業したい。卒業後が楽しみで仕方がない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます