第36話
(自由に生きたい、か……)
婿を取るにせよ取らないにせよ、今週中に家業である会社に入社するとなると、
今年の試験結果は厳しいものにならざるを得ないかも知れない。会社の仕事に時間を取られる分、勉強時間は其れだけ短くなる。必然的にに合格が遠のいてしまうかも知れない。
(いや、……)
勉強は、工夫次第で何とかなるかも知れない。
というより、何とかしなければならないだろう。司法試験合格者の中には、生活のためのアルバイトに時間を取られ過ぎて十分な勉強時間を確保出来なかったのに、最終合格を果たした人も、少なからず居る。
短時間集中して、優先順位を間違えず、ポイントを絞れば、方法論としては十分成り立つはずだ。
未来は、その点に関して言えば、不思議と不安は感じなかった。
問題は、婿の事である。
男性の事、と言い換えてもいい。
注文したブレンド・コーヒーと、チョコレートのケーキが運ばれてきた。この店のケーキは、ガトーショコラのタイプで、その濃厚なチョコレートの味とコーヒーの苦みがよく合う。
未来は、ケーキを一口食べ、コーヒーを少し口に含んだ。
体がリラックスしていくのが分かる。
未来は、今年で33歳になる。
この年まで、男を知らないわけではない。
むしろ、男性側の方が、放っておかない程の女性でもある。
しかし、この年まで独身であり続けたのには、実のところ、別の理由があった。
司法試験を志すようになったのは、このことが大きく関係しているともいえる。
未来にとっての「自由」とは、今も続いているその相手との関係の継続そのものを指すのだ。
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