第34話
「お嬢、良介さんが居なくなったって聞いたけど、あなた、大丈夫?」
食事が終わり、お茶の時間になった時、ひさが房子に聞いた。
「ええ、大丈夫よ。ウチには、未来がいるから。心配しないで」
「そうねえ。未来ちゃんは、しっかりしているものねえ。未来さんなら、大丈夫だわ」
「いつから、家業に入るんだい?」
と、輝夫が未来に聞いた。
「……」
「姉さんは、今、試験の準備に忙しいんだよ」
今まで、一言も口を挟まなかった弟の淳が、ようやく口を開いた。
「そうそう、そうだったよな。段平さんと同じで、弁護士を目指しているんだったね。その方は、どうするんだい?」
と、輝夫は、目を輝かせながら言った。
「段平さんって、ひいおじいちゃんの?」
「そうだよ。弁護士で作家だったんだ。知らなかった?」
「初めて、お聞きしました」
「なかなかのやり手でね。銀行への信用力のある人だったな。姉家督を調べて我が家に取り入れたのもあの人だしね。
僕は、法律には全く興味が湧かなかったけど、未来ちゃんが勉強していると聞いて、やっぱり血は争えないものだなと思っていたんだよ」
「姉家督?」
「そう。女性が家を継ぐっていう。我が家の相続形態だよ。元々は、北関東とか東北で行われていたものらしくてね。我が家の場合は、それがピタリとあったのさ」
「姉家督、か」
「元々、段平さんが、弁護士兼作家として、銀行に信用を得た上で、不動産を買い、
家主・地主業を始めたのが足立家の元々の始まりだからね。
四代目の未来ちゃんが、弁護士の資格があってもおかしくないのさ。むしろ、強みになるかも知れないな。だから、僕は応援しているんだよ」
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