第25話

 ケトルが、お湯が沸いたことを告げる。

 二人は会話を中断させ、紅茶と珈琲を準備する作業に集中する。

暫くして、桜井が口を開いた。

 「益田さんは、ご存じですよね」

 「うん、よくここに来られるし、そのたびに私も顔を合わせることが多いから。

父も凄く信頼していたし」

 「会社は、益田さんで持っているようなもんなんです」

 「でしょうね」

 「わかります?」

 「父がそう言っていました。うちの会社でまともなのは、益田と桜井だけだって」

 「私?社長がそう仰っていたのですか?」

 「ええ」

 桜井は、もう一度笑顔を見せた。

 それは、心の底から幸福を感じているような、そんな笑顔だった。

  

 人数分の紅茶と珈琲が出来た。


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