第15話

 益田・立花・土井の三者は革新派。

 高原・氏家・真田は保守派、ということになる。

 ここに、どちらにも属さない幹部が一人居る。

桜井という名の女性幹部だ。


 彼女はこの中で最も若い。

 本稿の主人公の未来と同世代である。

決して美女とは言えないが、芯の強さを感じさせる凜とした品の良さがある。

 年齢から考えても、経営の幹部というより、どちらかと言えば良介の秘書のような存在だ。

 若い彼女をA興産の役員にまで押し上げたのは、彼女の持つそのセールスセンスだった。

 A興産の主な事業は、ビル経営であることは先に述べた。商業用ビルと居住用マンションをバランス良く所有し、そのテナント料と家賃を主な収入源としている。

 ただ、このビジネスもテナントや入居者が思うように決まらず空室が増え出すと、事業は確実に細っていく。

 だから、このビジネスモデルで十分利潤を上げようと思えば、空室の数を限りなくゼロに近づけるか、完全に無くす必要がある。逆に言えば、空室が出ればすぐに次のお客つまりテナントや入居者を探し出さないといけない。

 益田を含むA興産の役員のうち、桜井はこの点に関して抜群の能力を持っている。

 その他の役員は、営業能力という点では明らかに彼女に劣っていた。

 次のお客を見つけてくるだけでなく、どうすれば効率的に集客出来るかについての企画力やその企画を元に情報を世の中に発信する広告や宣伝についても、抜群のアイディアと行動力を持っている。

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