第14話
良介は、必要とあれば、足立家の古い仕来りを次々と壊していき、家業をより
合理的な組織へと変革していった。その中心となったのが、益田・立花・土井の三人であり、旧態依然とした不動産業界における台風の目となって、A興産は急激に収益を伸ばしていった。
その結果、益田・立花・土井の三人は、社内の主流派と言おうか、幹部の中でも
中心を担うこととなった。
足立良介には二面性があることには触れた。
もう一つの側面として、伝統を重んずる保守性がある。
足立家は、すでに三代・百年を経てきている。当然のことながら、その地方の名士達が所属する「クラブ」の類には数限りなく名を連ねている。
足立家の企業グループが、その地方の老舗と評価されている証拠と言っていい。この社交の場においては、昔から続いている繋がりを最も重視する。祖父の代からの会員だとか父親同士が親友だとか、父の友人の紹介で入会したとか、そういう類のものだ。
事業を営んで行く上で、決して無視は出来ないのが、こういったクラブなのである。言わば、特権的社交の場とでも言おうか。
この種の集まりには、とかく雑用が多い。次の会合はどこで何をやるか、誰が誰の紹介でいつ会いに来るか、などだ。
良介がいかに精力漢とはいえ、体は一つしかない。自然と数ある会合のうち、どれを優先すべきかを選択する必要がある。
そういった調整役をこなすのが、高原・氏家・真田の三人である。時と場合によっては良介の代わりに会合に出席する時もあるこれら三人は、地味ではあるが、一時は影の実力者であった時期もある。
しかしながら、良介が事業の改革に本腰を入れ始めると、会合への出席が極端に減っていった。
自然と、高原達が代理で出席する機会が増えた来たが、良介自身がそれらのクラブに対して積極的でなくなって来たので、彼ら三人の社内での居場所が少しずつなくなりつつあった。
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