第5話
ただ、それは、未来の偏見かも知れない。
気を取り直してもう一度その写真を見てみると、
中々どうして、むしろ女性に好かれるタイプではないか、
と思った。
何とはなしに聞き流していたこの人の経歴とこの外見から考えて、
この人はなぜ「婿」になんか成りたがるのだろう、と未来は思った。
この男性の考えが、不思議でならない。
婿になってしまうと、一生妻とその実家に頭が上がらないだろう。
「飼い猫」のように、ただ、大人しく周りの顔色を窺うだけの人生になるのは
目に見えているではないか。
(いや、そうでもないか)
と、未来は思った。
未来の脳裏に、父親である足立良介の顔が思い浮かんだ。
彼は、周りの顔色など窺った事など一度も無かったと言っていい。
未来達を乗せた車が、ゆっくりとホテルの駐車場へと入っていった。
車内が一瞬暗くなる。
未来は見合い写真を閉じて、母親の房子に渡した。
今日で四回目となるこのホテルの駐車場は、未来にとって、もう見慣れたものになってしまった。
全くの無機質で、刑務所を思わせる白いコンクリートに囲まれたこの駐車場。
未来は、この場所に来るたびに、言いようの無い感覚に襲われる。
囚われて身動き出来ないような、逃れようの無い感覚。
とりあえず、今日のこの男性に、会うだけは会わなければならない。
(我が家のために)
そんな、使命感とまでは行かない緩やかな義務感だけが、今の未来を支えた。
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