5/4 怖いハンドクリーム
誕生日に彼女からハンドクリームをもらった。
「白くておいしそうに見えるだろうけど、絶対たべないでね!」ということだが、いくらおれが食いしん坊デブだからと言って、うまいものが溢れているこのご時世、食べる訳がないだろう。
「ゆうくんが食べている顔が好きなのよ」と言いながら、あいつはデートの時もおれの食べている動画ばかり取っている。今日だって自分のパンケーキはそっちのけで、撮影ばかりしていた。見かねたおれが「食べないならそれちょうだい」と言うと、あいつは「えー?どうしようかな?」と言いながらうれしそうに差し出す。
万年ダイエット中のあいつ。おれ的にはもう少し太った方がかわいいと思うのだけど、まさかブラックコーヒーにラードを混ぜる訳にもいかず、やんわりと忠告しては無視される毎日だ。
そんなあいつにもらったハンドクリーム。家に帰ってとりあえず空けてみた。赤地に白いバラのレトロなパッケージ。昔の化粧品みたいだなしらんけど。ふたに力を入れるとパカッとあいた。なるほど白い。そしていい匂いがする。確かに。
え、これ牛乳の香り?‥‥‥バニラの香りが強いから、どっちかというと動物性由来のホイップクリームか‥‥…。
自慢じゃないがおれは甘党のデブなので、ホイップクリームの種類にはうるさい。植物性、あれは邪道だ。甘いものは食べたいが太るのも怖いというビビりのためのクリーム。低カロリーゆえボウル一杯食べても全然物足りん!
あれを食べる位なら、潔く動物性クリームをチョイスすべきだろ。そして男のデブならボウル三杯はプレーンで行くべきだ!!
……大好物ゆえに思わず語ってしまったが、おれが大好きな動物性ホイップクリームにこのハンドクリームが酷似していたという話だ。これは単なる偶然か? いやそうだろう。普通に考えると偶然だろう。
とりあえずあいつ的にはこれを顔やら腹やらに塗ってスキンケアせよということだろうと思うので、まずは見えない所から腹に塗ってみた。自慢じゃないがおれの腹はお正月の鏡餅ばりのもち肌の三段腹だ。あいつもよく枕にして寝ているのだが、指でちょっと取って塗ってみた。が、違う。ここじゃない。この油分は俺には過剰だと、この時点で分かった。
……どうしようこれ。腹でこれならよりもち肌の顔に塗ったらてかてかデブの不審者が出来上がってしまう。こんなんで学校行けんし、行ったら行ったで「えwwお前その顔なに?」と言われていじめが始まってしまうかもしれん。あいつにも別れようってきっと言われる。でもあいつ的には塗れってことやし塗ったら塗ったで地獄‥…もうどうすればええんや!?
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