第21話 予想外

 数学の時間、私達は懐かしい問題を解いていた。



 速さの問題を授業でやっていた。



 けれど、私はどれ1つ解くことが出来なかった。



「分からない…。なんでこうなるの?」



 どうしても問題の意味が理解できない。



 先生は順番に、生徒に問題を解かせる。



 私の番となった。



 私は解けないので、素直に「分かりません。」と答えた。



 先生は、「じゃあ一緒にやろう。」と言ってくれた。



 途中までは、なんとか答えられたものの、割り算が解けない。



 分からない。けど、解かなきゃ。でも、解けない。



 あぁ、どうしよう、やっぱり皆と同じく出来ない。



 パニックになり、涙が目に浮かぶ。



「……グスッ。」



 大丈夫解ける。そう思おうとするが、解けない。



 分からない。



 苦しい。皆と同じく出来ない事が、物凄く悲しい。



 ポロポロと涙は止まらない。



「大丈夫?」



 先生が心配する。



 私は、先生についに打ち明けた。



「計算障害があって解けないです。」



 こっそりと誰にも聞かれない様に。



「わかった。ここは5を入れたら出来るよ。」



 5を代入する。



 出来た。



「大丈夫だよ。」



 先生は安心させてくれた。



 けれど、皆みたくできない自分が嫌というほど情けなく思えて、苦しくて泣いたままだった。



「グスッ………。」



 皆と同じく出来ないのが、辛い。



 そこでやはり自分は、障害者だと実感させられて、それが重くのしかかる。




 皆と同じくやりたいのに、出来ない苦しさ、悔しさが重なり、パニックを起こす。




 授業終わり、何事も無かったかのように時は進んで行く。



「ねぇ、聞こえた?計算障害って言ってたの。」



「え?聞こえなかった。」



「そっか。やっぱり、そんな気はしてたんだよね。」



 友人2人の会話が聞こえる。



 あぁ、ばれていたんだ。計算障害があるって。



 当人がいる前で話すのか。



 カミングアウトしてるとしたとしても、当人がいる前で話さないだろ。



 私は、周りとずれている人間なんだ。可笑しいんだ。さらに、実感させられた。



 聞いているのが嫌になる、余計パニックになる。



 なんだ、やっぱり私は違うんだ、ここにいる人間とは。



 友人に嫌だったことを伝えられないでいる。


 

  あぁ、私は、望んだはずなのにな。



『障害者である事を。』



 結局後悔しか残らない。



 この日は、予想外の出来事が起こった日だった。

 






 













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