第18話 母親
お母さんは、私を未熟児、いわゆる産まれる予定より早く産まれることに対して、「ごめんね。」と保育器の中にいる私に、泣きながら謝っていたらしい。
今思うと考えられないが、お母さんは自分の子供を健康に産んであげられなかった事を悔やんでいたのだ。
その事を知った私は、更に泣いてしまった。
「あぁ…ずっと、愛されていたんだ。」
こんなふうに産まれてきたから、お母さんの悔やんだ事が分かる。
自分も健康に産まれて来れなくて申し訳ないと思うからこそ、お母さんの気持ちは痛いほど分かった。
だからきっと、今回の心理検査の結果を見て1番悔やんだのは、お母さんだろう。
お母さんのせいじゃ無いのに…。
そう思いながら、自分も悔んでしまった。
きっと、お母さんと私は同じ気持ちなのだろう。
『健康で産まれてほしかった。』
この想いだけは、きっと母と娘だからこそあるのだろう。
お母さんは、私が思っている以上に強い女性だ。
未熟児で産まれ、17年経ってから発達障害と判明した娘に対して、ショックが無いわけがない。
それを子供に諭されない様に、我慢しているのだから。
きっとお母さんは、私のいないところで、私が思っている以上に沢山の事を調べて、何かあった時に対応できるように、必死にやってきたのだろう。
私は、それに気がついた瞬間、涙が止まらなかった。
今だってそうだ。
17年経ってから、娘が発達障害と判明して、発達障害のことについてお母さんは沢山調べている。
独りで。
娘の為にと、娘が将来苦労しない様にと、私の事をちゃんと考えてくれていた。
なのに、自分は、主観的にしか物事を見れなくて、何も出来ないままだ。
「なんで、自分から動こうとしないんだ。」
情けない。
お母さんに全部任せっきりじゃないか。
ふと、Twitterを見ていたら、とあるツイートが目に入った。
『発達障害の子持ちの母親です。発達障害の子供なんて生まなきゃよかった。』
胸がザワッとした。
不安になってお母さんに聞いてみる。
「お母さん。あのさ、お母さんは、私が産まれて来て良かった?」
「もちろん。音緒が産まれて来なきゃ良かったなんて思った事は1度もないよ。元気で育ってくれて嬉しいよ。」
そう話したお母さんは、ふんわりと微笑んだ。
「分かった。ありがとう。」
あぁ、お母さんは、本当に私が元気に育ってくれた事、今生きている事が嬉しいんだ。
私は部屋に戻り、1人で涙を流していた。
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