第15話 歩み寄り

 発達障害者と診断されてから、数週間が経つ。



 私の周りが段々と、変化していった。



 それは、私の持って産まれた障害に対して、受け入れようとする歩み寄りだった。



 お母さんや、お爺ちゃん、お婆ちゃん、叔父さんの4人が受け入れようと、歩み寄ってくれている。




 ただ、変わらないのは父親のみだった。




 私の事は、全部お母さん任せだった。




 ふと、お父さんが自分から、「俺は障害に対して理解ある。」と言った日の事を思い出した。



 今なら分かる。この人は、理解しているつもりをアピールしたいだけの人だと。




 本来、本当に理解している人ならば、絶対に理解しているなんて言わない。



 だから、お父さんは理解してないのだと。そう思った。




「本当にどうしようもない父親だな。」



 顔を顰め《しか》ながら放った言葉だった。



 一方、お母さんは、色々と調べてくれていた。




「音緒、ここの職業訓練学校行ってみない?」




 こんな風に高校卒業後のことをどうするか考えてくれていた。




 それから、この間の心理検査を聞きに行った時は、色々と分からなかったので、もう一度一緒に聞きに行こうと言ってくれたり、私に対して歩み寄ってくれていた。




 お爺ちゃんやお婆ちゃんは、私の障害に対して、どういう風に歩み寄ったら良いのか分からないし、少しでも発達障害について知りたいとのことで、心療内科で話を聞きたいと言っていた。




 叔父さんはというと、「音緒ちゃんは、普段の生活で支障が出てないと思うから、大丈夫だと思うよ。」と言ってくれた。




 皆気にする必要は無い。と言ってくれた。



 心理結果が分かった後に、お母さんに、たい、弟に言うのかと聞いてみた。




「まだ、中学生だし、言葉は知ってても意味は分からないと思う。それにいきなり言われて、サポートしろと言われても無理でしょう?」



「うん。」




「それに、大はずっと音緒を“お姉ちゃん”として見てきたのよ。だからね、この事を言われても分からないと思うの。」




 あぁ、そうだ。この子の姉は私しかいないんだ。




 「でも、いずれ精神的の気持ちの部分は、大は今は幼いけれど、音緒を追い越すよ。そうなったら話そうかなって思ってる。」



 「うん…、その通りだね。」




 いつか、大に助けられる日が来るのだろう。



 そう思うと、どこか寂しくて、嬉しかった。



「今は、反抗期だから何とも言えないけど、いつか助けられる日が来るよ。」



 きっと支えてくれるだろう、そう願った日だった。











 














 

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