第14話 願い

 お母さんが言っていた「集団が苦手」の意味をもう一度考えてみる。



「皆と同じ事をしなきゃいけない時に苦痛だと思う事があるから…?」



 実際に苦痛だと思った事はあった。



 どうしても自分の思うようにいかないからだ。



 これだけ聞けば、わがままな人と捉える人が多いが、発達障害を持った人はそういう特性があるのだ。



 苦手な可能性としては、皆と同じスピードでやるべき事をやれないから、対人関係でトラブルが起きやすいからだ。



 どうしてもワンテンポ遅れてしまう。


 そのせいで違和感も増して、集団が苦手だと感じるようになった。



 だから、グレーゾーンと診断されてある程度納得できた。



 それと同時に、発達障害と診断されてほしいと願うようになった。



 グレーゾーンと診断はされたくなかった。



 どうせなら、はっきりして欲しかった。曖昧なのは嫌いだから。



 発達障害と診断されたら、周りの理解もある、障害手帳も取得できる、支援学校にも行ける、何かしらの支援を受けられるから。



 発達障害と診断されて、曖昧なところに居なくていいという安心が欲しかった。



 そんな考えを忘れて過ごしていた。



 


 ゴールデンウィーク中に、お母さんのお兄ちゃん、つまり叔父さんに会って、心理結果の説明をする。




「そんなに気にしなくていいと思うよ。」



 それと、と叔父さんは続ける。



「音緒ちゃんは、障害者であって欲しいと願ってるように見えるなぁ。」




 何も言えなかった。図星だった。



 実際に願ってた事だから。




「え……。」



「音緒ちゃんは、精神的に限界が起きて、心療内科行って、そこで発達障害と抑鬱って診断されてきたでしょ。前は、抑鬱の話題出てたのに、今はどうだ?発達障害に、スッポトライトが当てられている。発達障害と診断されたくて、心療内科に行くようになってる様に思うね。」




「うーん。」



 そう……なのかもしれないな。



 

 グレーゾーンと言われてから、ずっと本当は願っていたのかもしれない。




『発達障害と診断されたい』




 本当は、ずっとずっと思っていた。




 グレーゾーンと言われて、どっちなのか分からなくて、不安な日々があったから、発達障害と診断されたかった。




 あぁ、叔父さんの言うとおりだ。




 自分は、ずっと発達障害でありたいと願っていたのだ。



 そんな考えを思い出した日だった。



























 




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