第10話 心理検査
私は今、発達障害者のグレーゾーン、つまり診断出来るかどうかの曖昧なところにいる。
だから、詳しい検査をする。
それが、心理検査。別名ウィスク。
ウィスクは、IQ検査と、言語理解、知覚推理、ワーキングメモリー、処理速度の出来具合を調べる検査だ。
言語理解は、言葉での指示の理解や説明が理解しずらいか、コミュニケーションが困難かどうかについての指標の事だ。
知覚推理は、図形などの読み取りや見通しを立てられるかどうかを表している。
ワーキングメモリーは、情報を一時的に頭の中に保持しながら、次の情報を処理する能力の事。さらに、読み書き、計算などの能力にも関連していることがある事をいう。
処理速度は、目で見た情報を素早く処理したり、その処理に基づいて、作業を時間内に終わらせることを表す。
この4つをそれぞれ数値化した結果が見られる検査の事を指したのがウィスクだ。
「宜しくお願いします。」
挨拶と共に検査が始まる。
私にとって、心理検査をやっている間は、とても楽しい時間だった。
積み木を同じ形にするやつや、同じくなる様に絵を組み合わせたり、数唱をしたり、ちょっとした計算をやったりして、私からしたら、やりがいがあった。
結果から言うと、私の場合、IQが69しかない事、つまり平均よりかなり低かった。
それに、処理速度が遅く、ワーキングメモリーが弱い事、対人関係でトラブルが起こりやすい事が判明した。
「対人関係でトラブルが起きやすいというのは、例えば音緒さんが言った言葉に対し、相手が嫌な思いをしたとして、それがどうして嫌なのか分からなかったりします。また、その誤解を解こうとして、相手に近づきすぎてしまったり、逆に遠ざけすぎてしまい関わらなくなる事があるんです。」
そう説明をされて、私は何度も頷いた。
だって、私に全部当てはまることだから。
父は先生に、「治ったり、改善方法は無いんですか?」と聞く。
「ないとも言い切れないし、あるとも言い切れないですね。ですが、先ずは、音緒さんを受け入れてあげる事が大切です。」
あぁ、この人は治るものだと思っているんだと痛感した。
父は渋々「分かりました。」と言った。
「手帳はあった方が良いんですか?」
「あった方が音緒さんの場合良いでしょう。」
こうして、私は障害者手帳を取る事が決まったのだった。
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