第6話 ヒーロー

 ピコン!とスマホの通知が鳴った。



「なんだろう?」



 ふとスマホに目をやる。



啓介けいすけ】と表示されていた。



 啓介というのは1個上の先輩の事で、皆からは「すけさん」と呼ばれていた。



 え?なんだろう?



 そう思いながら、ラインを開く。



『ADHDの薬飲んだってツイッターで見たけど、どうした?』



 私は、事情を話す。



『心療内科行ったら、発達障害の傾向あるって言われてきて、飲んでる。』



『そうは見えないけどね。俺の友達もそうだから、なんかあったら相談してな。』



『ありがとう。』


 

次の瞬間、驚くことが返って来た。



『てかさ、障害者の人羨ましいって思うんよね。』



 え…………?羨ましい?どういうことだろう?



 不思議に思って、聞いてみる。



『羨ましい?』



 更に驚くべき返事が返ってきた。



『うん。だって、人と違う人生歩めるんよ!?かっこいいし、羨ましいじゃんか!』




 かっこいい?羨ましい?そんな風に考えた事無かったな……。



『それに、ヒーローみたいじゃん。』



 ヒーロー?



『ヒーロー?』



『ヒーローってさ、困難とか苦労とか多いじゃん。それと同じで、そういう人たちも困難とか多いから、ヒーローだと思ってる。だから、苦労とか困難出てきたら、ヒーローになれる!?的な考えでいればいい。』



『あとね、外国では試練を神から与えられた者って障害者の事言うんだよ。』と教えると、



『すっげぇ!!!異能力者じゃん!!』



 そう言われた。


 

 何か胸に暖かいものが触れた。



 ありがとうございました。と返信しようとした瞬間、頬に暖かい水滴が触れた。



 そこでようやく自分が泣いている事に気がついた。




「あれ………?」



 ポロポロと涙は止まらない。



 あぁ、自分は今物凄くこの人の言葉に救われているんだ。



 そう思うと嬉しくて嬉くて、涙が止まらなかった。




「………ッ!」



 かっこいいなんて、羨ましいなんて初めて言われたから。



 あぁ…、そういう風に思えるようになりたい。



 そう心から願った日だった。







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