第2話 虐め

 ガラガラ。教室の扉を開ける。



 それと同時に、私の目の前に飛び込んできた光景は、異様なものだった。



「ねぇ、なんかしてるよ。」



「うっわ、ホントだ。やだー。」



 あぁ……。またか。虐められるのはもう沢山だと言うのに。



「……。」



 言い返さずに、聞こえなかったフリをする。



 自分に大丈夫と言い聞かせる。



 原因は分かっていた。



 自分が普通じゃないから。



 虐められるたびに、何度「普通ならばどれだけ良かったのだろう。」と思った事だろう。



 どうして周りと同じ事出来ないんだろうね?と、ヒソヒソ話された事もあった。



 その虐めが原因で、とうとう精神的に限界を迎えてしまった。



 ふらふらと夜親が寝静まったのを確認し、台所へ行き包丁を取り出す。



 スッと刃先をお腹ヘ向けた。




 やっと……楽になれる。



 そう思い、お腹を刺そうとした………。



 だが、死ぬ事は出来ず、ただ包丁をお腹に向けて終わったのだった。


「あぁ……死ねなかった。どうして普通じゃないの!?私はどうしてッ!!」


 ポロポロと涙が溢れて止まらない。



 どうして普通じゃないのだろう。ただそれだけが引っかかっていた。



「普通って……何?」



 いつもの様に、その疑問は増えていく。



 呼吸を整え、包丁を元に戻し、自分の部屋へ向かった。



 自分の部屋の扉を開け、ベッドに倒れ込む。



 死ねなかった後悔と、虐められる恐怖が同時に襲ってくる。



「怖いよ。助けて。」



 そう呟き、横を向くとスマホが目に入る。



 ふと、配信の事を想い出した。



「駄目だったら、ここに来る。」そう話したことを思い出し、配信を開く。



 ピコン!配信スタートの音と共に、義稀くんが来てくれた。



 更に、ゲーム関連で仲良くなった佐藤由奈さとうゆなが来てくれた。



「どうしたの~?」



 2人から心配される。



 その事が嬉しくて、配信で泣いてしまった。


 

ポロポロと涙が止まらず、泣き続けた。



「いっぱい泣いて良いからね。」



 暖かい言葉をかけられたのはいつぶりだろう…。



 そう思うと更に、涙が止まらなかった。



 暫く《しばら》して落ち着き、今学校で起こってる現状を話した。



 2人とも「頑張ったね。」と言ってくれた。



 由奈ちゃんから「心療内科に行ってみたらどうだろう?」と提案をされた。



「行ってみたい。」そう答えて、夜も遅いのでそこで配信は終了した。



 お母さんに、言ってみよう。そう思いながら、眠りについた。

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