生まれた時から死んでいる男
ネコ
第1話
2023年。最近より生きづらさを感じる。
何かと言えば平等と言いたいことが言えない。皆我慢している様な顔をしている。
令和5年。
その男はSNSを見ていた。
「このトイレって需要どこにあるんだよ・・・。」
つい心の声が漏れてしまった。
今話題になっているジェンダーフリートイレの是非についての書き込みだった。
何かと男女平等と言われる今日。昔の方がまだ生きやすかったんじゃないか?
ふと男は幼少からの記憶を思い出す。
机の上には最近取り寄せした資料の本が置かれている。
そういえば生まれてこのかた色々あったなぁ。
男は学生になってからの記憶を思い出す。
『もし』があればもっと幸せになれてたのだろうか。
男は社会に出てからの記憶を思い出す。
もうこんな時間か・・・。変なこと考えていたな。
1階から家族の声がする。どうやら無事に帰宅したようだ。
「おねーーーーーーーーーーちゃーん!!お土産ー!!」
「・・・分かったー。」
男は下からの声に応じる。
資料を閉じてゆっくりと下へ降りていく。
一階のリビングには父、母、祖母、帰省中の妹、姪がいる。
皆笑っている。
「たくさん買ってきたんだね。」
男は思う。これで良いんだと。これが幸せなのだと。
これは一見順風満帆に見える男の話。
この男は生まれた時から死んでいる。
叶えたい夢はたくさんあった。
サッカーがしてみたかった。野球もしてみたかった。
バカみたいに学校で騒いでみたかった。
彼女も作ってみたかった。結婚も経験してみたかったのかもしれない。
今の時代だったらもっと生きやすかったかもしれない。
しかし『もし』はない。
これは。そんな女が唯一叶えたい夢ができた話。
生まれた時から死んでいる男 ネコ @molthop0129
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