【11.新たな日常、新たな立場】
1年間の“契約”を経て、最終的に「雲母敏明」ではなく「キララ」としての人生を選択した“彼女”。
当の本人は、翌日から再びメイド少女としての暮らしが再開される──思っていたのだが、その予想は外れることになる。
『それでは~、“キララちゃんの身の振り方”に関する会議を始めま~す♪』
珍しく図書室から出てきたバンシー・メイドのヴィオレッタが思いがけない言葉を告げるが、驚いたのはキララだけで、ダイニングに集った死神悪魔や伊野樹は当然という顔をしている。
「私の身の振り方、ですか?」
「うむ。キララ、君がこのまま我が屋敷でメイドとして働くことを希望しているのは重々承知しているが、その前にひとつ、とある“
正式にこの屋敷──明徒館の一員となったキララに、主人たる死神悪魔が命じたその仕事とは、「なるはやで学校に通って、少なくとも義務教育過程を終える」ことだった。
「あ、あのぅ、この姿ですからお忘れかもしれませんけど、私──元の“僕”だった頃に、一応ちゃんと大学まで卒業してるんですけど?」
当然のことながら、キララはそう主張したのだが……。
「知っているとも。だが、それはあくまで“男”としてだろう?」
不得要領な顔をしているキララを見て、主が説明をしてくれる。
「昨晩は詳しく解説しなかったが、キララ、君の現在のその身体は“ほぼ”
昨日までは、その辺り(成長と老化)は完全に止まった状態だったらしい。
「今後、現世の人間との明確な関わりが必要な際は、君に表に出てもらうことも多くなるだろう」
「我が
「そして、その際、君に現世における確固たる身分がある──と同時に、外見通りの“若い娘としての常識や習慣”を身に着けていることが望ましい。できれば何人か友人と言える知己もいると助かるな。
そのためにも、一度は学校に通ってほしいのだ」
そんな風に理路整然と説得されては、キララとしても自分に“それら”が欠けている自覚が多少なりともあるだけに、拒否しづらかった。
「──わかりました。義務教育ということは、私はどこかの中学校に通えばよいのですね?」
さすがに小学生になるのは勘弁してほしいため、まずは予防線を貼るキララ。
本人も、今の外見で高校生だと主張するのは無理があることは理解していたので、中学生で妥協したのだろう。
「ふむ、現代日本の中学生というのは、12~15歳だったか。ならば妥当だろうな」
──と、主の同意を得られたまではよかったのだが。
どの学年に“転入”するかで、本人も含めた4人の間で意見が割れた。
「最短の1年で済むよう中3からでよい」とキララが主張したのに対し、彼女を可愛がっているヴィオレッタは『この際、中1からみっちり3年間、女子中学生生活をした方がいいんじゃないかしら?』と反論。
議論の末、両者の中間の2年生を推した死神悪魔と、彼に同調した伊野樹の意見が通り、キララは一週間後の4月半ばから「最寄りの街にある私立女子校に中等部2年生として通う」ことが決定したのだった。
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