幕間 国王陛下と弟君


 王都、国王陛下の私室である。

 人払いをして、部屋の中には二人だけであった。

「明日、出陣する」

「父上、私も行きます」

「お前は残って、王都を守れ」

「しかし、兄上の方が」

「戦が終われば、エアハルト、お前が王太子だ」

「私が?」

「お前は王都を守り、決して女神に逆らうな」

「女神?」

「西の森離宮にいる」

「あそこには兄上の……、まさか」



 国に現れる『女神』の伝説は、王家に生まれた男子に伝えられる秘事口伝であった。


 国に危機が訪れた時、どこかに女神が現れる。

 女神はこの地に恵みをもたらすだろう。

 現れた女神を決して失ってはならない。

 そして、決して逆らってはならない。



「女神はクリスティアンの前に現れた」

「でも、それでしたら尚更、兄上の方が国王に─―」

「あれは出て行くと言った。国にはとどまらぬ。見守るのが私の務めだ」

「父上」

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