第26話 超能力者たち
胸が熱い。
さっきの
『──コウくんは絶対に私を守ってくれる……そうでしょ?』
……ああ、当然だとも。何度も何度も好きだと、守るとそう言ってきた。それが、
「信頼されるって……こんなに嬉しいことなんだな」
「……コウくん? なに感極まってるのよ?」
「なんていうか、拾ったものの威嚇ばかりしてきていた子猫が、とうとう気を許して膝の上に乗ってきてくれたような感動……!」
「なんか、ちょっと小馬鹿にされてる気がするわね……」
ゴツゴツ、と。肘で二の腕辺りを軽く小突かれる。
……うんうん、こういうやり取りもなんかいいよね。恋人みたいだ。
「……はぁ」
俺たちがそんなことをしていると、正面で立つ
「
「まさか、そんな色恋なんてくだらないもののために世界を犠牲にしようとするなんてね」
「色恋がくだらない? あら、よっぽど灰色の青春を送ってきたと見えるわね、
「軽口にも品が無いな」
「あなたみたく品があっても花が無い人生よりかはマシよ」
「……なんだと?」
「少なくとも私はあなたがくだらないと言う色恋に救われたわ。色褪せた人生の、意味の見いだせなくなっていた袋小路に、突如として鮮やかな大輪の花が咲いたように」
「目に見える景色が色づいた。ここで生きたいと思えた。だから私はもう、自分に嘘は吐かないわ。自己犠牲なんてしない。自分の欲に素直になる。私は生きたい。コウくんといっしょに、素晴らしき普通の人生を歩んでやるわ……!」
「親も無い、人工的に生み出されたに過ぎない君が普通の人生を……? 笑わせるな、人造人間には人造人間の運命がある。君だって分かっていたハズだ。君の命は本来、僕たちに使われるためのものだと」
「クソ喰らえね。全力で抗わせてもらう──!」
「コウくん!」
「オッケー!」
俺は
「サーバーに直接ウイルスを流し込む気かっ? だが、そうはさせないよっ!」
「これは……!?」
「まさか……サイコキネシスっ!? ウソ、
驚く
「僕たちが行っていたのは何も君の永久機関の能力に関する研究ばかりじゃない。君という人工的な超能力者の製造成功例を参考に、一般人の脳細胞にゲノム編集を行った脳細胞を移植する研究も並行して行っていたのさ……!」
「まさか
「ハハッ、僕だけじゃないさ」
ズラリ、と。
「ここにいる全員が僕と同じく人工的に生み出された、あるいは天然物の超能力者たちさ。異世界の勇者よ、そして
「うお……!?」
他の超能力者たちもまた、俺たちに向かって手を掲げたかと思うと、俺の体にかかる圧力がさらに増した。
「フハハッ、潰されない内に
……くっ、潰される前に
……。
……。
「…………いや、その必要ないな?」
……手も触れられてないのに動きを止められてちょっとビックリしたけれども。でもかかる圧力だけでいえば、異世界で水中戦をしたときに、モンスターに深海300mに引きずり込まれた時の方がよっぽど大きい。
「ハァ──ッ!!!」
「「「っ!?」」」
俺が体の内側で練り上げた魔力を外側へと解き放つと、俺を止めていた力が弾け散る。
「なっ……!?」
「いや、そんなに驚くことか……? だって、サイコキネシスだろうがなんだろうが、結局のところ力づくで俺を押し留めてただけだろ?」
……昨日やったように、俺は魔力さえ使えば地上200mまで楽々ひとっ飛びできるくらいの力があるからな?
俺はそのままサーバー群まで
「
「ありがとう。たぶん、データは3分もあれば引っこ抜けると思う」
「了解」
俺は球状の
「──というわけで、あと3分は
「……なるほど、ウイルスではなかったか。研究データを抜き取って世間に公表しようという腹積もり……無駄なことを」
「──っ!?」
俺の体が突如として浮き上がった。
「──無重力を経験するのは初めてかね?」
「無重力っ!?」
足が地面に着かない。なんとか着地しようともがくも、足が空転する。
「超能力とはあらゆる物理法則を超える能力を指すのだよ。何も、サイコキネシスのことばかりを指すわけではない」
「フハハッ! ジャーマノイドとの一戦で調べはついているぞっ? 丸山コウくん、君は地上にいる間は無敵とも言えるほどの力を有しているが、空中戦となれば一転してまるで無防備だとっ!」
「……!」
「撃てぇっ!! 全員、攻撃だぁッ!!!」
空中の俺めがけて様々な攻撃が繰り出される。サイコキネシスや超能力により作り出された剣や炎、あるいは小銃を向ける者も居た。全ての攻撃が俺に着弾する。
「ふはははははっ! 呆気ないものだ。あのお方は、本当にこの勇者のことを特別視していたのか? まるで手応えがない! ふはははは──」
……うるさいなぁ。そういうのは大体負けフラグなんだからさ、ちゃんと俺を仕留められたかを確認してから言おうな?
「──は……?」
「……」
「えっ、はっ……え?」
「……攻撃、終わったか?」
俺が問うと、
「な、なぜ……生きている……?」
「そりゃ、魔力でガードしたから」
「……お、おかしい! ジャーマノイドの時は空中で攻撃を受けてなすすべもなかったハズッ!!!」
「あの時は魔力で
でも、今は違う。
「俺の対策をしっかり研究してきたのはすごいと思うけど、研究ってさ、例えば部屋の室温とか湿度とか、研究対象の状態とか、前提条件がすごく大事なんじゃないか?」
「……くっ!!!」
「ここまで言えばもう、分かるだろ?」
「ぼっ、防御だっ! 総員、僕へとサイコキネシスでバリアを──」
「遅いッ!!!」
無重力の中、俺は後ろに向けて【
「俺が空中戦で弱いのは守るべき相手が居る場合のみ。最初から条件不足なんだよこの──三流研究員がっ!!!」
「グハァ──ッ!?!?!?」
【
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