第25話 若の超能力
「……!」
その先にあった部屋はSFチックなものだった。
広く、壁と床は白いタイル状。天井も数十メートルはあろうかというほどに高い。その奥に見えるのは一台数メートルはあるだろう巨大な黒のサーバー群。
そして、それだけではない。
「──ああ、ようやく来たね。丸山 コウくん、それに石神
ひとりの長髪の若い男が中央で安楽椅子に座ってこちらを見ていた。
「君たちがここに来るだろうことは分かっていた」
「……
「
「あの人は
「
ユラリ、
「しばしの自由を得て満足できた頃合いだろう、
「まさか」
フン、と。鼻で笑った。
「
「そうかもな。だとしても……もう少し考えて判断してほしいものだ」
方丈は肩を
「なにせ、君の選択には【世界の命運】がかかっている。このまま君が他国の手に渡ったり、君が君自身の能力を制御できなくなったなら……この世界は滅びるかもしれないのだから」
「……っ!」
……それにしても、世界が滅びるかもしれない、か。それは昨日、ジャーマノイドも言っていたことだった。
「……私は、私の能力のことを知らないわ」
ややあって静かに、
「であれば、能力は発現しないはずよ。そうすれば制御不能に陥ることもない! そして他国の手からは……コウくんが守ってくれるもの。私は決して世界を滅ぼしたりしない!」
「……だな。その通りだ」
俺の手を握ってくる
「
「そういうこと。だからそこをどきなさい。私たちにはやることがあるの」
俺と
「──【
「……!」
「その能力は、原子力発電や核兵器開発に必要な資源であるウランの操作・再生成が可能、というものだ。
具体的にはウランの核分裂スピードの制御、そして核分裂によって生まれるプルトニウムや核廃棄物などの使用済み燃料を【未使用のウラン燃料に再生成】することができる」
唖然とする俺たちを意に介さず、
「特筆すべきなのは、その能力によってウラン資源の永久的な使い回しが可能ということ、そして本来核廃棄物になるはずの使用済み燃料から希少な【ウラン235】も抽出できてしまうということだ。
【ウラン238】よりはるかに核分裂の起きやすい【ウラン235】は発電・兵器化において貴重かつ重要、それを自前で生成できる
「──待て待て、待てよッ!!!」
俺は、壊れた人形のように喋り出した
「なんで今、それを俺たちに教えた……!?
「そうだな。だが、
「……! クズがッ! 自分たちの手元に
……
「
「……」
「……いいえ。私の能力があなたの言う【
「ジャーマノイドのおかしな行動……?」
「彼が私を即座に殺さなかったことについてよ」
「……あっ」
……確かに、思い返してみればヤツの行動は変だった。
「ジャーマノイドはおそらく……私が死の直前に能力を暴発させ、周囲に放射能をバラまくんじゃないかと考えていたのね。それで、人への影響が比較的少ないだろう土地を選び、私に対しての直接攻撃を避けた……」
「ああ、そうなのだろう。まあ、実際は
「いやぁ、しかし。メキシコ、韓国、EU、日本政府などなど……様々な刺客に遭ってなお、ここまで無事にたどり着いてくれて本当にありがとう、
「……」
「そして丸山コウくん、君にも感謝だ」
「君が他国から刺客を次々に退けてくれたおかげで
「……おい、何を勝手に決めてんだよ」
「ん? 何がかな?」
「勝手に
「フッ……怒鳴るなよ、程度の低いチンピラのようだぞ? 異世界では勇者様だったんだろう? ならその身分にふさわしい振る舞いをすべきだ」
「だいいち、我々の元に帰ってくるかどうかを決めるのは
「……」
「答えを聞こうじゃないか。
「……ええ、そうね。私の超能力は【永久機関】という風聞の時でさえ全世界から狙われるものだった。なのに、それに加えて私自身が核兵器並みに危険な存在となってしまった……」
「そうだ。君は危険人物だ。君自身の意思かどうかに関わらず、君が1mmでもウランを保有しており、超能力の操作を誤ればその場に集う大勢の人間が死ぬ。優しい君は、そんな形で迷惑をかけたくはないだろう? 何よりも、そこに居る丸山コウくんには、特に」
「確かに……私はコウくんをそんな酷い能力の巻き添えにはしたくないわ」
「なら、決まりだな」
「ええ、決まりね」
「
俺は、思わず
「コウくん……」
「言ったろっ!? 俺は、全世界を敵に回してでも
「……まったく。勘違いしないで、コウくん」
「えっ……?」
「──
「いまこの私の隣に、超絶ステキな恋人のコウくんが居るっていうのに……それ以上の帰る場所が私にあると? そんなわけないでしょ」
「……本気か? 最悪、その恋人を巻き込んで殺すことになるかもしれないんだぞ?」
「学んだのよ。私が勝手に身を退いて自己犠牲を選択するのは簡単……でも、それじゃ誰も本当の幸せは手に入れられないって。本当に大事なのは信じること。自分自身と、自分の大切な人をね。私は絶対に自分の能力を暴走させたりなんてしない。そして──」
「──コウくんは絶対に私を守ってくれる……そうでしょ?」
「当然ッ!!!」
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ここまでお読みいただきありがとうございます。
本日から小説のタイトルを少し(かなり?)変えました。
よろしくお願いいたします。
また、本作ドラゴンノベルズコンテスト参加中です。
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