第24話 泉ヶ丘の廃病院
片側のドアを失った軽トラをそのまま走らせて、俺たちは仙台市内までスピード超過でやってきた。
「……やっぱり、ヘリは振りきれないわね」
「だね」
デルタフォースを振りきったかと思えば、途中からは自衛隊ヘリが2台、ピンポイントで俺たちの元までやってきていた。やはり俺のスマホの位置情報を一時的にとはいえONにしたからだろうか? 墜とそうかとも思ったが、ヘリが墜落すれば下の一般道を通行する一般市民に被害が出てしまう。
「……まあ、尾行されようが別にいいわ。今日中に泉ヶ丘の旧施設からデータを引っこ抜けばいいだけだもの。それにしても……」
「……? どうかした?」
「……いえ、なんでもないわ」
その表情はどこか少し暗いように見えた。
* * *
俺たちは
「……周りの車からめちゃくちゃ注目されるね」
「まあ、ドアが片方ないからしょうがないわね。警察に目を付けられる前にさっさと行きましょう」
相変わらず自衛隊ヘリに追尾されたまま、軽トラは県道を通り、そして周りから高い建物がなくなっていった頃合い……泉ヶ丘の姿が見えてくる。しばらく走ったその道を左折した先すぐ、2階建ての病院があった。病院自体の大きさにしてはとても広い駐車場へと、
「着いたわよ、コウくん」
「……ここが
「まあ、ここから見る分にはね」
「えっ?」
「実際の研究施設自体は【地下】にあるのよ。広大な敷地はそのため」
「地下?」
「こっちよ」
「……」
「
「……なんでもないわ」
「……乗るわよ」
「ああ、うん」
「今の、隠しコマンドかなにか?」
「ええ。1階からの下りのエレベーターで【2F】のボタンを何回も押す人間はいないでしょ? そのアクション後に【B1F】と【2F】といっしょに押すことで【B2F】へ行けるの」
「なるほど、よくできてる……」
エレベーターが下っていく。階数表示はB1Fまでだったが……それを通り過ぎてなお、エレベーターは止まらない。1分ほど、降下の時間が続く。
「……深くない?」
「深いわよ。地下2階は地下150メートル付近にあるもの」
「地下2階の概念が崩れそうだ」
そうこう言っている間に、ピンポーン! とエレベーターの到着音が鳴った。ドアが開くと、広々とした空間が電灯の白い薄明かりに照らされていた。
「すご……!」
思わず感嘆の声が漏れ出る。多くの研究室と思しき部屋がガラスの壁で区切られており、ときおり、何に使用されるのか見当もつかない機材がそのまま放置されているところもあった。
「なんていうか、スパイ映画に出てくる基地か……あるいはどこかの医薬品メーカーがTウイルス的なものを作ってそうな雰囲気だな」
「……こっちよ、コウくん」
「……?」
そういえば、先ほどからどこか
旧施設ということは
これだけ綺麗に施設の形が残っていれば、それだけ思い返す記憶も鮮やかなものだろう。あまり俺からは触れない方が……ん?
……これだけ綺麗に施設の形が残っていれば?
なにか、引っかかる。なんだ?
……だって、おかしいじゃないか。
「なんで廃病院なのに、電気が通っているんだ……?」
俺の問いに、
「……地下のこの研究施設に電気が通っているのはおかしなことではないわ。だってここのサーバーはまだ稼働していて、私たちはそれを経由して
「あ、そっか……」
「でも、サーバーが稼働しているからといって、さっきのエレベーターが作動しているのはおかしいの」
「え?」
「電気系統は地上の病院と地下のこの
「じゃあ、なんでさっきは動いて……?」
「私の推測が正しければ……この先に、答えはある」
「……入るわよ」
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「これからの展開に期待!」
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