第23話 怒りのデスロード
「
「なんで先生がコウくんのスマホの番号知ってるのよ……?」
「いや、これは学校からかかってきてるだけだって! 俺の電話番号を知ってるのは、俺がひとり暮らしで、固定電話とか持ってないから……連絡用に学校に渡したからで!」
「ふぅ~~~ん……」
「信じてくれよぉ~!」
わかりやすくむすっとする
「くっ……弁解してる暇ももらえないのか……!」
俺は後ろに向けて【
しかし、さらにその事故車両の後ろからも続々とトラック、ジープが走り出してやってきた他、対向車線も使って追手は俺たちに迫ってくる。
「キリがないな……!」
「まったくね……って、何あれ」
アクセルを踏みながら
「なんで……一般車は降ろされたはずじゃ……! 降り損ねたのかっ!?」
であればマズい。俺たちの争いに巻き込まれて事故を起こしてしまうかもしれない。
「
「……ええ、幸い全部左車線だし、右から一気に追い抜くわ……!」
右車線からグングンとスピードを出して、一般車たちを追い抜こうとして……しかし。
「……? どういうこと?」
一向に、一般車を追い抜けない。その数台の一般車たちは示し合わせたように速度を上げて、俺たちの車両と並列になったかと思いきや……
「ッ!?」
その内の2台が前後から俺たちの軽トラを挟むように右車線へと移動した。そして、残された1台が軽トラの横にピタリと張り付いた。
「……ハメられたッ!!!」
それは罠。速度を上げても落としても、ハンドルを切っても俺たちが逃げられないようにするための
「一般車に乗っているヤツらはみんな外国人……ってことは、刺客かっ?」
「自衛隊とグルってことは米軍……雰囲気から察するに、デルタフォースってとこかしら……っ?」
「デルタフォース?」
「米軍のテロ特殊部隊。ひとりが200人の歩兵に匹敵すると言われている……最強の部隊よ。一般市民に紛れる作戦もあって服装と頭髪は比較的自由だから……」
「……確かにロン毛とかコールローとか、兵士にしては特徴あるな……!」
『……外国人? ロン毛? 丸山くん! いったいさっきから何を言っているのですかぁ~!?』
「ヤバい、まだ電話切れてなかった!」
ツバメ先生の声が足元から聞こえて、俺は急ぎ落ちていたスマホを拾って耳に当てる。
「もしもし、先生?」
『あー! ようやく出ましたね丸山くんっ! 金曜日の早退に引き続き昨日と今日と補講をサボって旅行だなんて、不良すぎますよっ!!!』
「いえ、実はよんどころない事情がありまして……ちょっと今も手が離せないというか……」
『よんどころない事情? さっきからドカーン! ガシャーン! とノイズが酷いですが、いったい今どこに──』
「ごめん先生!」
プツン、通話を切る。それと同時に、
「──うわっ!?」
グラッと大きく衝撃が襲った。左サイドの車に体当たりをされて、そのまま横に押されていた。
「コイツら……! 俺たちの車を壁に押し付けて無理やり止める気かッ!」
「そのようねっ……前後の車も密着して来て──えっ!?」
後ろの車、その助手席から身軽に細長の男が身を乗り出したかと思うと、アクロバットに体を翻して──そのまま俺たちの軽トラの荷台へと跳び移ってきた。その手には、拳銃。
……後ろから俺の頭でも打ち抜こうってか!?
「コウくんっ! 横の車なんとかならないっ!? そこさえ空けば、あとは私がなんとかしてみせるッ!」
「……分かった!」
俺はシートベルトを外し、助手席に身を縮めるように横になって、車体を横から押し付けてくる車──プリウスへと両足の裏を向ける。
……ごめんな、軽トラの持ち主の人。ぜったいいつか弁償するから……!
「──吹っ飛べッ!」
俺は両足を思いっきり伸ばし、軽トラのドアごとプリウス目掛けて蹴りを繰り出した。俺の力を込めたその一撃に、俺たちのドアごと、プリウスがガードレールを飛び越えて東北自動車道を落ちていく。左車線が空いた。
「ナイス! コウくん、しっかりと掴まっててっ!」
「おう──うぉぉぉっ!?」
「行くわよっ!」
ガチャッ。
「──甘いわね!」
「娯楽の少ない研究所生活で、私が【ワイスピ】や【マッドマックス】を何回リピートしたと思ってるのかしらっ!?」
ハンドルを左、右、そしてまた左に切ると見せかけて、相手がつられて動いた一瞬のスキをつき、俺たちの乗る軽トラが前に出る。
「デルタフォースごときがなんだっての! ──コウくんッ!!!」
「承知っ!!!」
車間が1m以上空いたタイミングで俺が【
「いやっほーっ!!!」
「はぁ、なんだか映画みたいで最高にスリリングだったわ……!」
「
……ハンドルを握らせると危ないタイプの人ですね?
下手なツッコミを入れて軽トラから振り落とされたくはなかったので、俺は喉まで出かけたその言葉を飲み込んで、大人しくシートベルトを着用するのだった。
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