異世界帰り元勇者の俺ですが、初恋のクール系美少女が全世界の最強異能力者たちに命を狙われてるようなので、そいつら全員を敵に回してでも初恋を成就させようと思う
第22話 ウワキじゃないわよねぇ? ──ゴゴゴ…
第22話 ウワキじゃないわよねぇ? ──ゴゴゴ…
コンコンコン、と。俺たちはホテルの隣の部屋──ジャーマノイドの部屋を訪ねていた。昨日まではずっと意識を失っていたようだが……
「反応がないわ。やっぱり、まだ寝ているのかしら」
「……うん。寝てるみたいだ」
部屋に入ってすぐのダブルベッドには、死んだように眠るジャーマノイドが横たわっていた。その顔には俺の拳の痕がくっきりとした青あざとなって刻まれており、苦しそうに呼吸をしていた。
……正直、医者に見せるべきではあるけど……残念ながらそこまでの面倒は見切れない。
「……よし。行こうか」
「ええ。この人の意識の回復を待つ意味もないし、私も賛成。EUにも狙われているってことが分かっただけで充分よ──ただ」
「なにそれ?」
「……この人へのちょっとした
* * *
5月1日(日)、午前8時。
「高速に乗れば1時間ちょっとみたいね……」
軽トラックをそのまま拝借し続けて、俺たちは東北自動車道へと入った。このまま仙台市内まで行くらしい。
……にしても、だ。
「
「そう?」
「だって、まだ18歳でしょ? 免許取り立てなんじゃ……」
「ああ、免許ね。確かに発行されたのは18になってからだったわね」
「……え?」
それはまさか……17歳までの間も運転はしていて、つまり無免許運転常習者だったとか、そういうことなのか……?
「ちょっと、変な勘違いはよしてくれる?」
「
「敷地内って……それはいいの?」
「免許って公道を走るために必要なものでしょ。私有地内を走るのに免許の有り無しなんて関係無い……って言いたいところではあるけど、まあ、半分黙認みたいなものだったかしらね。私、これでも結構な上級研究員だったし」
「えぇ……」
「だからコウくんはマネしちゃダメ」
クスクスと笑いながら、
「いいわね、高速は。山奥じゃこんなに飛ばせないもの」
「……安全運転でお願いします」
「分かってるわよ。私を何だと思ってるの」
「私の運転適性はAよ。しっかりと目的地まで運んであげるから、それまでゆっくりとしていなさ──」
言いかけて、
「──なに、後ろのアレ……!」
「後ろ……?」
普通に後続車があるだけでは? と思い振り返ると……そこにあったのは大型の軍用と思しきトラックとジープの数々。それらが横に2列になって俺たちの後ろへと迫って来ていた。
「……コウくん! ネット見てくれるっ!? 東北自動車道の交通情報!」
「え、でも……! スマホ起動したら位置情報が!」
「後ろの4t車、陸上自衛隊の車両よ! もう位置はバレてる! 今さら気にしても無駄ってこと!」
「わ、分かった……!」
俺は約2日ぶりにスマホを起動させる。バッテリーは68%。通信良好。俺はさっそくブラウザを起動させようとして、
「げっ……」
着信履歴、54件。それが目に入る。昨日の朝から今日の朝にかけてのその着信は、すべて俺の通う高校からのものだった。
……やっべ。そういえば昨日も今日も俺、授業の補講を何も連絡せずにブッチしちゃったんだった……!
「コウくんっ? どうかしたっ?」
「あ、いや……なんでもないよ! いま調べる!」
俺はすぐにブラウザで東北自動車道の交通情報について調べた。
「……東北自動車道で広範囲の道路破損。福島西~仙台宮城IC間を封鎖。一般車両の進入禁止……って。すでに入っていた車両も次々に一般道に降ろされてるって! これ2分前のニュース!」
「……なるほど、人海戦術。おそらく福島より先のICすべてを張られてたのね」
「私たちが高速に入るタイミングで一般車両の進入を切って、私たちだけを東北自動車に閉じ込めよう……ってわけね」
「……どうする?」
「決まってるじゃない」
「バレてるならこれ以上隠れていても仕方ないもの。
「了解!」
それじゃあ俺の役割はその安全運転のサポートだ。軽トラの荷台にでも移って、追手車両をちぎっては投げをしてやろう……と思っていたところ、
──ピリリッ、ピリリッ。
俺のスマホに着信があった。
「うぇっ?」
びっくりしてスマホを取り落としてしまうと、
『あーーーっ! やぁっと繋がりました! もしもしっ、丸山くんですかっ!?』
どうやら通話とスピーカー切り替えが同時にタップされてしまったらしい。まろやかな声がスマホから飛び出した。その声の主を聞き間違えるわけもない、ツバメ先生だ。
『もしも~し! 丸山くんっ? おーい!』
「やっべ……どうしよ……」
……こんな状況を、ツバメ先生になんと説明できるだろうか。いや、できまいよ。
「……コウくん?」
「あ、ゴメン。すぐに切るから」
「そうじゃないわよ……っ」
「誰よその女……! まさか、ウワキじゃないでしょうねぇ……!?」
「えぇッ!? いやいや! 違う違う!」
唐突に、俺へと別の危機が迫ってしまった。
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