第2話
引っ越すと決めたら、今度は引っ越し屋を決めなければならない。まずは相場が知りたい。
適当にネット検索して、相場でないかなーと、ぽちっとしてみたら
「一括見積を申し込みました」
と出てきてしまった。
やってしまったあああああ! 相場が知りたかっただけなのに!
翌日。ラッシュのように電話とメールが来てしまって大後悔するのだった。とりあえず、応対できた3社に見積もりに来てもらうことにした。
家電も買わなければなー、とさらなる出費を気にしつつ引っ越し費用を抑えたいなと思う。
見積もりにはM、A、Sの順に来てもらうように予約。
見積もり当日、最初に来るはずのMが来ない。電話が来て、前の客のところで大分長引いたとのこと。一番最後に来てもらうことになる。
エアコンの故障を謝りつつ見積もりしてもらう。
AもSも時間通りに来た。価格も想定の範囲内。
後から来たS曰く、価格はほぼAと同程度だが保証が手厚くできますとのこと。
後出しじゃんけんは有利だなと思う。
Sは引っ越し当日に新品家電を届けてくれるサービスもやってるとのこと。これに心を動かされて、Sに決める気になった。
だって、これから家電売り場まで行って選んで交渉してって邪魔くさいもんなあ。
これまで冷蔵庫、洗濯機、エアコンは備え付けのものを使っていた。家電付き物件だったのだ。
引っ越しにあたって冷蔵庫と洗濯機を買う必要があった。
「この後、別の会社が見積もりに来ますか?」
と聞かれたので、Mが来るという。
「ああ……Mですか」
なんだか妙に実感がこもったような感想が伝わってくるような声で言われたのだ。
「正直、価格勝負だとMには勝てません。Mが最安値になります」
へえ~。
「ですが、Mはあまり評判がよくありません。家具家電を壊しても保証はされません」
へえ~。
「もし、良ければMの見積もりは断ってもらえませんか」
ど、どんだけ~。
同業者にそこまで悪評を言われてしまうって、今まで何をやらかしたんだ。
引っ越し業者も決まった。家電の準備も可。段ボールももらったので荷物の梱包を開始。
中々不動産屋からの連絡が来ないなと思ったら、auの通信障害に巻き込まれていた。
「審査通りました。引っ越し日はいつにしますか」
「○○日で(立入調査の前の土日)」
「無理です!」
通信障害に巻き込まれてなかったら、無理じゃなかったのかなああ。
引っ越し日を1週間ずらす。立入調査の前に引越し完了は無理となった。とりあえず、開き直って荷物を箱詰めしていく。引っ越し屋に引っ越し日の変更を伝える。
引っ越し日が決まったところで、管理会社に引っ越すって言わなきゃと思い出す。
電話連絡したら、退去の2か月前に告知してもらうのが原則なので、2か月分の家賃を払う必要があると言われる。
ここでうっかり月が変わってしまってることに気づく。6月中に言っとけば……!
ついでにエアコンの故障も告げる。
「では、エアコンの修理をしますので型番のわかる写真をメールで送ってください」
と言われる。え? 直すの? この期に及んで……?
駐車場の管理会社にも引っ越しで契約終了を告げる。
「2か月前に告知を……」
ここでも同じミス。
「2か月分の賃料は保証金と相殺して、残った保証金は銀行口座に振り込みさせていただきます」
と言われる。あれ、保証金払ってたっけ……? 記憶のかなただわ。
こちらの管理会社は車で行ける距離にある。休日に訪れて手続きを済ます。
管理会社から電話が来た。
「エアコンの件なんですが。エアコンが古いものなので、修繕費用が高くなります。そして、ご存知の通りオーナーさんにはそれを払えるだけのお金がなく……」
「でしょうねえ」
正直、修理費用を見積する前からわかってた話だと思う。
「ですので、その分家賃を一か月分引くことで対応させていただきます」
おお! やった! 退去時の支払いが安くなったぞ!
……健康を害しそうなほど、暑さに喘いではいた。氷入りのアイスは食感が邪魔に感じて苦手だったのに、この時ばかりは天からの恵みに思えていた。
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