第22話 シリウスの覚悟
あーあ。
マルコの顔色が悪くなっていく。
シリウスに関しては震えてるし。
騎士様も難しい顔してる。
「あー、くそ!!」
シリウス、怖いよ?
マルコ、遊ぼうよ?
騎士様、何か怒ってる?
「スター!!!!」
はい!!!!!!!!!!
「声、でけぇ!!」
えぇ〜、理不尽。
みんな、なんか冷たくない?
てか、なんでそんな顔するの??
「本人がこんなんじゃ、どうにもできないな」
騎士様、よくわかんないけど褒めてないでしょ??
「スター」
マルコ、顔色悪すぎないかな。
おじさんも、お姫様もみんな黙ってる。
あれ、なんかやばかったかな。
とにかく。
「待て」
くるりと後ろを向いて逃げようとしたけれど、捕まりました。
シリウスからは逃げれません。
「スターは、これからどうするの」
マルコが何か言ってる。
どうするって言われたら。
「どうしよう??」
「スター、その顔はなんだ」
騎士様、どうしよう。
てか、なんか怖いよ??
それにしても
「お腹、空いたぁ」
考えるのもめんどくさいし。
「スター」
マルコ、なぜ笑ってる。
「スターちゃん、君には選ぶ権利がある。これからどうする。シリウスと共に、ここからでるか、これからもこの屋敷で働くか」
おじさん、どういうこと??
「父上!」
マルコ、腕いたい。
「マルコ、甘えるのはよしなさい。いつまでも一緒はないから」
おじさん、わかりやすくお願いしまーす!!
「スター、俺は何があってもスターの味方だから」
シリウス、どうしてそんな顔するの。
「シリウスと騎士様と。マルコ様とずーっと一緒がいい。だって、もう」
その後は言えなくて。
笑っていたら、騎士様に持ち上げられる。
「スター、俺のことをどこまで知ってる?」
シリウスのこと。
「怖いもの知らずなバカで。無鉄砲のお人好し。意外と頭が良くて口だけ達者な最低野郎!!」
どう、すごいでしょ、と胸を張ればシリウスは大きなため息をついて。
「なんで、俺が最低野郎なんだよ」
頭をぐしゃぐしゃにされながら言われたから、私は。
「だって、騎士様もマルコも言ってた よ??」
2人を指さして言う。
「スター、てめぇ!!」
騎士様、顔色悪いよ??
「子どもは残酷なほど素直だから」
マルコも、子どもじゃんか。
「アドルフ、マルコ。スターの前でなんてこと教えてんだ」
なんか、寒いな。
「スターちゃん、とりあえずこっちで美味しいご飯でも食べようか」
おじさんに手招きされてどうしようかと、ほんの少しだけ考える。
「考えるふりしながら歩くな!!」
「アドルフ、スターに言える立場か」
騎士様もシリウスも仲いいな。
「スター、待って。見捨てないで」
マルコ、どうしたんだろう。
「スターちゃんのことなのに話しが、ややこしいな」
「この娘は、自由すぎるくらいですからね。あぁ、もう。気をつけなさい」
転びそうになった所をお姫様に支えられる。
なんだかんだ言ってもお姫様は優しい。
「スター!!」
後ろからシリウスの声が聞こえて振り返ると、誰よりもまっすぐ輝く笑顔で私に言った。
「ずっと一緒だから。今までもこれからもずっと」
誰よりも強く誰よりも明るく。
どんな人にも負けないほど眩しく、どんな人にも負けないほどの頭のよさ。
「約束だっ!!」
約束。
「スター」
悲しくないのに、なぜだろう。
おじさんにそっと抱きしめられる。
目が熱くて。喉が苦しくて。
さっきとは、違う涙が流れる。
マルコも、騎士様も笑ってる。
笑わなくちゃ。笑わなきゃいけないのに。
笑えない。
涙が止まらない。
止めたいのに。泣きたくないのに。
止まらない。
「子どもは、子どもらしく泣いてろ」
騎士様、子どもじゃないし。
「スターは、頑張りすぎなんだよ。もう少し、僕たちを頼ってよ」
マルコ、弱いじゃん。
「泣き虫な子ね」
姫様、うるさい。
「スターちゃん、涙をふこうね」
おじさん、力が強い!!
「スターは、モテるな」
シリウス、見てないでどうにかしてよ!!
マルコに笑われながら、涙を拭かれる。
おじさんの力が強すぎて、マルコの背中に隠れてる。
鼻、つまった。
「スター」
シリウスに呼ばれて見つめる。
不思議。シリウスが光って見える。
気のせいかな……?
目が回る。グルングルン。
体がふわふわする。
「ごめん、スター」
遠くから、シリウスの声。
今は、寝てて。
*✲*✲*✲*
森の匂い。
ゴツゴツした腕。
この腕は、騎士様だ。
そこまで、考えるのがやっとで。
それからの、記憶はなくて。
ただ、安心して。
うれしくて。それと同じくらい寂しくて。
なんとなく、このまま寝てたらだめな気がする。
起きなくちゃいけない。
行かないといけない。
「スター、ごめんね」
奴隷ですが同じ奴隷に助けられました~貴族の子供を助けて最強侍女目指します~ 陽控優亜 @youkouyua
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